アメリカ国内では、海外への軍事的関与を縮小すべきだという世論が多数派を形成しつつある。アメリカ議会では共和党支持層を中心に、多少の違いはあるものの、その基本的な考え方については支持が広がっている。
その結果、保守系ストラテジストを中心に、「アメリカはアジアとヨーロッパの安全保障にいかに関与すべきか」という問いに向き合わざるをえなくなり、その答えのひとつとして「日本の核武装論」が浮上している。
保守派専門家が強く推す
「選択的核拡散」という新戦略
アメリカがいま唱え始めているのは、「選択的核拡散(Selective Proliferation)」と呼ばれる新戦略である。
これは、不安定な独裁国家の核保有を断固阻止する一方で、安定した民主国家には核兵器を所有させ、地域の防衛負担を分担させるという発想である。
この考え方を最も強く推しているのは、共和党を中心とした保守派エリート層だ。
彼らは従来の「アメリカが世界を守る」という戦後の発想に限界を見出し、むしろ「責任ある同盟国が自らの地域を守る」体制へ移行すべきだと主張する。その象徴的な論文が、11月19日に米外交誌『フォーリン・アフェアーズ・レポート』デジタル版に掲載された“America’s Allies Should Go Nuclear:Selective Proliferation Will Strengthen the Global Order, Not End It(アメリカ同盟国は核保持に進むべきだ――選択的核拡散は国際秩序を終わらせるどころか、強化するものだ)”である。
https://www.foreignaffairs.com/canada/americas-allies-should-go-nuclear
本論文では「安定した民主国家」として、カナダ、ドイツ、そして日本の3カ国を取り上げ、それぞれが核武装することのアメリカ安全保障の意義を説いている。
とくに日本は、中国の台頭という極めて重大な戦略課題を抱える地域に位置しているため、選択的核拡散の「最重要候補」として扱われている。アメリカ保守派の多くは、日本を「守られる側」から「地域秩序の支柱」へと引き上げることこそが、アジア安定の鍵であると考えはじめているようだ。







