ベストセラー『「悩まない人」の考え方』著者の木下勝寿氏が「マーカー引きまくり! 絶対読むべき一冊」と絶賛する本がある。『スタートアップ芸人 ── お笑い芸人からニートになった僕が「仲間力」で年商146億円の会社をつくった話』だ。著者の森武司氏は、2005年にFIDIAを創業して以来、18年連続増収増益を達成。年商146億円の企業へと成長させた。その成功の裏にはどんな原動力があるのか?
今回話を聞いたのは、森氏と同じく元芸人であり、現在はFIDIAグループのグループホーム事業「FIDIA DAYS」の社長を務める水上雄一氏。人気芸人・山里亮太氏の元相方であり、ドラマ『だが、情熱はある』に登場する宮崎君のモデルとなった人物だ。友人関係にまで口を出す山里氏の“理不尽な言動”に、なぜ水上氏は怒らなかったのか。チームの意識を揃える本質について語ってもらった。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)
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厳しい言い方をされても
「この人の相方で良かった」
――山里さんのNSC時代のエピソードでは、水上さんが理不尽な扱いを受ける場面が多かった印象です。「怒りの感情」はなかったのでしょうか?
水上雄一(以下、水上):もう、全然なかったですね。
――そうなんですね。なぜですか?
水上:一言で言えば、山里くんがものすごくストイックな人だったからです。
NSCでは僕らは22期生で、AからHくらいまでグループが分かれていました。
入学してからいろんな人を見て回ったのですが、売れている人はやはり目立っていました。
一方で、それ以外の人たちはおしゃべりばかりで、ネタ合わせもしていないケースが多かった。「本気で売れたい、そのために来ている」と思っている人が少ないと感じたんです。
僕も山里くんも21歳になる年に入学したので、周囲の高卒組より年齢が少し上。その分、温度感やノリの違いも大きかったと思います。
――なるほど、同い年だったんですね。
水上:はい。だからこそ、山里くんも僕も、時間の使い方に対して、周囲と意識が違いました。
周囲には面白い人もいましたが、ダラダラおしゃべりする時間がもったいなく感じてしまって。僕はまだ「交流もお笑いの勉強にはなる」と思っていましたが、山里くんは「意味のないつき合いには行かなくていい、すべての時間をネタに費やせ!」という感じの勢いだったんです。
その姿勢を見て、この人と組んでよかった、自分はいい相方を選んだと心から思いました。
理不尽な扱いや言い方も
納得できる理由とは
――一般的には「友達づき合いまで口出すな」と思いそうですが、腹は立ちませんでしたか?
水上:ないですね。
言い方は厳しいけど、言い方が厳しいだけだったので。
もう少し柔らかく言ってくれたらと感じることはありましたが、言っていることは間違っていなかった。すごく真面目な人だな、と感心していました。
――どんな言い方をされたのですか?
水上:たとえば「その場所に行って何かあるの?」「面白いことあったの?」とかです。
僕が「こんな会話をした」と伝えると、さらに「それで水上くんは何か面白いこと言えたの?」「どういう発言をしたの?」と続けて聞かれる。
山里くんとしたら、「そのやりとりが1つのエピソードトークとして使えるかどうか」を知りたいし、そこまで意識してほしいということだったのだと思います。
ただ、一方的に言われるばかりではなく、僕から山里くんに同じような質問をすることもありました。上下関係ではなく、対等に意見を言い合える友人関係だったんです。
ビジョンとミッションが一致していれば、
理不尽は生まれない
――チームの意識を揃えるうえで、何が一番大切だったと思いますか?
水上:振り返ると、僕らは「侍パンチで売れたい」という同じ目標に向かっていたし、そのためにどう頑張るかという方向性も明確だった。それに、山里くん自身がその目標に対して、ストイックに努力する人だった。
ビジネス的に言えば、ビジョンとミッションが一致して、共有できていた。だからこそ、傍から見れば理不尽に見えることも、僕にとっては理不尽とは感じなかったんだと思います。
――経営者になった今、当時の経験はどう活きていますか?
水上:組織づくりも全く同じですね。目標が明確で、それに向かってリーダー自身が本気で動いている。そうすれば、メンバーは自然とついてくる。
逆に、目標があいまいだったり、リーダーが本気ではなかったりすると、どんなに優しく接しても信頼は生まれない。山里くんとの日々で学んだのは、「言い方の問題じゃなくて、本気かどうかがすべて」ということです。
――『スタートアップ芸人』には、そうした「仲間力」の原点が詰まっているんですね。
水上:そうですね。本気で同じ方向を向いている仲間がいれば、どんな困難も乗り越えられる。僕らの会社はそうやって成長してきました。
この本が、チームづくりや組織づくりで悩んでいる人の参考になれば嬉しいです。
(本書は『スタートアップ芸人 ―― お笑い芸人からニートになった僕が「仲間力」で年商146億円の会社をつくった話』に関する特別投稿です。)










