「もっと早く来てくれれば…」
進行してから来院する人が多い現状
「治療適応となる中でも、早期の認知症の人に比べて、症状の比較的軽いMCIの人の方が効果の大きいことが治験データからわかっています。MCIの期間は3~4年程度です。個人的には、この期間の中でも早いタイミングで治療して、自分の医師で楽しむことができて、認知症に至るまで、つまり身近な人の目や手助けが必要になるまでの時間を延ばしてあげることに意義があると考えています」
だが実際は、MCIの段階で治療を行う人は3分の2程度。「もっと早く来てくれれば……」と思うことも多いそうです。「まだ大丈夫」と判断し、より進行してから来院する人が目立つと言います。
効果が限定的な患者への治療は、医療経済的にも疑問が生じます。そのためにも、本来は「入り口」を絞って治療を行うべきではと指摘します。
「どう絞るかが今後の課題です。私たちの施設でレケンビを18か月投与した人たちのデータも出てきています。これらを解析し、より大きな効果が期待できる患者さんの絞り込みの提案につなげていく。そうすれば、治療を受ける患者さんも、また医療経済的にもハッピーですよね」
井原さんは、最終的にはMCIよりもさらに前段階で、Aβが脳に蓄積していても症状のない「プレクリニカル期」の投与に、いかにつなげていくかが最大の関心事だと話します。現在、レケンビやケサンラを含む複数の抗Aβ抗体薬で、プレクリニカル期に投与することでアルツハイマー病による症状が出ることを「予防」する治験が進んでいます。
最後に、井原さんはこう語りました。
「抗Aβ抗体薬の効果を最大化するためには、プレクリニカル期に投与するしかないと思っています。Aβの蓄積量も少ないため、ARIAの発現頻度も低いことが期待されます。今後のためにもまず、データの蓄積によって安全性が確認出来次第、施設要件の緩和などによりキャパシティーを増やしていく必要があります」
(監修/東京都健康長寿医療センター健康長寿イノベーションセンター臨床







