「仕事の目的を考える」という原則
吉田:『明日を支配するもの』には、生産性向上の6つの条件の一つとして「仕事の目的を考える」という文章があります。
知識労働の生産性を考えるにあたってまず仕事の質を定義する部分です。
・仕事の目的を考える
ここでは、知識労働で重要なことは仕事の目的であり、最初に行なうことは、仕事を定義し、それに集中することであると言います。
そして、「行なうべき仕事は何か」「何でなければならないか」「何を期待されているか」「仕事をするうえで邪魔なことは何か」を問うことが必要である」とあります。
問うことで見えてくる「ズレ」
吉田:リーダーがメンバーにこれらを問うことで、何らかの問題点が見つかるかもしれません。
例
・「調理に集中したいのに、レジや接客を頻繁に頼まれる」
・「営業で売上に集中したいのに、日報や事例共有シート作成に時間を取られる」
“何のために働いているのか”が明確になると、問題点も明らかになります。
これが曖昧になっているとモチベーション低下につながることもあります。
看護師の生産性が倍になった事例
吉田:『明日を支配するもの』で紹介されている事例です。
それらの雑用は、看護婦よりも給与の低い病棟事務員に任せることができた。そこでさっそく、そのようにしたところ、看護婦たちの生産性、すなわち本来の仕事に使える時間は倍になった。患者の満足度も倍以上になった。それまでに絶望的に多かった中途退職が激減した。これらのことがすべて、わずか4か月間に起こった」
あなたの職場にも、役割と仕事がずれているケースはないでしょうか。
口先ではなく「行動で示す」リーダーへ
吉田:自分は何のために働いているのか。
メンバーがこのことを見失わないためには、口先だけでないリーダーシップが必要です。
「口先だけでない」とは、言葉と行動が一致していること。
真の課題を聞き取るコミュニケーション、関係者に働きかけて要望を実現させる行動など、一貫性のある真摯なリーダーシップが問われます。
人生レベルの問いへ――「何によって憶えられたいか」
吉田:また、今の仕事に限らず“何のために働くのか”という問いとして考えるのもまた大切なことです。
最後にこの言葉を紹介したいと思います。
ドラッカーが13歳のとき、宗教の先生フリーグラー牧師から問われた言葉です。
「何によって憶えられたいかね」
ドラッカー愛好家の中でもとても有名な問いで、日頃から手帳に書いて自らに問う人も多いものです。
ドラッカーはこの問いを「自己刷新を促す問いである」と言っています。
ぜひ、リーダーはもちろんメンバーにも伝えたい重要な問いです。
そして、「何のために働くのか」
目の前の作業だけでなく、メンバー一人ひとりがどのような強み・資質を持ち、何をもって組織に貢献し、そして人生においてどう成長したいのかを応援することで、リーダーはさらに一段深いリーダーシップを発揮できるのではないでしょうか。








