米中経済が突き進む「泥沼離婚」への道中国発の貨物便が到着した英国で荷物を下ろす作業員(2025年)
PHOTO: MARY TURNER FOR WSJ

 中国北東部の穀倉地帯では、農家が政府から大豆栽培への補助金増額という思いがけない恩恵を受けている。米国からの経済的自立を宣言するための、推定1兆ドル(約157兆円)をかけた全国的な取り組みの一環だ。

 そこから1万2000キロ以上離れた米中西部ウィスコンシン州ミルウォーキーでは、工業部品メーカーのハスコが、国内工場での中国製部品の使用を減らそうと奔走している。トランプ政権が輸入削減と米製造業の復活を目指し、関税を振りかざしていることが背景にある。

 「一部の顧客は、中国リスクをゼロにしろと要求している」。ハスコのオースティン・ラミレス最高経営責任者(CEO)はこう明かした。

 この二つのトレンドの根底に働く力は、米中両国政府が受け入れつつある現実に後押しされている。米中は、最も慎重さを要する貿易の諸問題で泥沼化する「離婚」に向けて動き始めている。双方とも経済における競争を国家安全保障上の問題とみなしている。

 中国指導部は「デカップリング(分断)」や「デリスキング(リスク低減)」とも呼ばれる米中経済の関係解消は避けられない、と判断している。この方向転換は、もはや西側諸国のジュニア(下位の)パートナーではないという、中国が長年抱いてきた野心を成就させるものだ。それは数十年に及ぶ中国の基本方針、すなわち中国の経済的成功は、低価格商品を米国の消費者に販売することや、米国の資金とノウハウで中国の技術力を育てることに依存しているという考え方との決別でもある。

 米中共に、両国間の全ての貿易を終わらせることは望んでいない。ただ米中のし烈なライバル関係は、今や中国の経済戦略の主な原動力となっており、習近平国家主席は頂点に立つ決意を固めている。

 「この1年間で、中国は米国を対等なライバルとみなすようになった」。米ベテラン外交官で、現在はコンサルティング会社マクロ・アドバイザリー・パートナーズに在籍するサラ・ベラン氏はこう述べた。「中国はデカップリングを受け入れ、今やそのデカップリングを進めるペースを制御することに主眼を置く」

 ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が中国の公的記録を分析したところ、中国政府は2024年初め以降、農業やエネルギーのほか、人工知能(AI)推進の原動力となる半導体の自給自足体制の構築に約1兆ドルの資金を投じている。この戦略はすでに、中国がグリーンエネルギーや電気自動車(EV)といった分野で有力な地位を占めるのに役立っている。

 ドナルド・トランプ米大統領がエヌビディア製AI半導体「H200」の中国への輸出を承認したことなど、経済統合が継続しているかのような兆候でさえ、中国政府から見れば、米国のテクノロジーからの最終的な自立を加速させる動きとなる。トランプ氏は、この決定によって米国は技術的リードを収益化できるとする一方で、依然としてエヌビディアの最先端半導体は渡さないと述べている。

 トランプ政権が12月に公表した2025年版「国家安全保障戦略(NSS)」には、米国は「自国の経済的自立を回復する」とした上で、中国との貿易は「バランスを重視し、かつ機密性の低いものを中心にすべきだ」と書かれている。