しばらくすると、愛絵さんたちは一緒にエレベーターに乗り込んでいきました。愛絵さんの姿を追えたのはここまででした。

 高級タワマンを舞台とする調査は困難を極めます。コンシェルジュがいるエントランスは厳重なセキュリティーで守られ、居住者や業者、約束がある人以外の立ち入りは困難です。

 私は愛絵さんが出てくるのを待ちました。

 待っている間も愛絵さんのような雰囲気の女性が、1時間で合計11人も次々に入っていきました。

 さらに3時間ほどして、愛絵さんを含め入っていった女性全員が同時に出てきました。愛絵さんもですが、何人かは入る時には持っていなかったハイブランドの紙袋を持っていました。

 明らかに異様な状況でした。愛絵さんはその後最寄りの駅で女性たちと別れ、実家に娘を迎えに行き帰宅しました。

 その日は、ただただタワマンに行くことが目的だったようです。

セキュリティーが厳しいタワマン
不貞調査はどうなる?

 私は眞人さんへ愛絵さんの行動内容と、仮にタワマン内で不貞行為があったとしても、決定的瞬間を押さえるのは難しいことも付け加えて報告しました。

 その報告に「そうですか」と電話越しに落胆している様子が伝わってきました。

 しかし、これ以外に調査する方法がないわけではありません。

 眞人さんの姉がつかんだ「1枚のスクリーンショット」を足がかりにして、デジタル専門の調査に切り替えることにしました。

 ここから愛絵さんの過去の行動の足取りを追う、SNS行動解析調査に取り掛かりました。

 この調査はデジタル空間に存在する小さな手がかりを徹底的に解析し、実際の場所と人物と行動を結びつけることを目的とします。

〈場所の特定〉

 眞人さんの姉が場所は特定していましたが、探偵の調査の結果をまとめた報告書を裁判の資料として有効にするため改めて「1枚のスクリーンショット」の背景の角度や特徴的な家具の配置を、都心の有名タワマンの居住者用ラウンジの公開情報と照合し裏どり確認をしました。

 その結果、調査日に愛絵さんが入っていった高級タワマンの上層階にある、居住者用ラウンジであると特定しました。