相席ブロックとは、一人で乗車するにもかかわらず、隣り合った2席分を予約し、発車直前に1席分をキャンセルすることで、隣に別の客が座るのを阻止(ブロック)する行為だ(写真はイメージです) Photo:PIXTA
主に高速バスで静かに広がる「相席ブロック」というハック技。2席予約して直前に1席キャンセルすれば、隣は空席になる……少額の出費で快適を買うこのテクニックは、本当に「賢い」のだろうか。SNSに溢れる「知らないと損する」という言葉の裏に潜む心理と、制度の穴を突く行為が当たり前になりつつある現代社会の倫理観。その「ハック」は賢いのか、それとも浅ましい行為なのか?(ライター、編集者 稲田豊史)
「相席ブロック」なるハック技が流行している
師走である。
年末帰省の交通手段に安価な高速バスを利用する方も多いだろう。そんな高速バス界隈で、昨年あたりから顕在化してきた予約テクニックが、「相席ブロック」だ。
相席ブロックとは、一人で乗車するにもかかわらず、隣り合った2席分を予約し、発車直前に1席分をキャンセルすることで、隣に別の客が座るのを阻止(ブロック)する行為だ。こうすれば高確率で隣席が空席となり、「落ち着ける」「遠慮なく飲食できる」「手荷物や上着を置くなど2席分を使える」といったメリットを得られる。女性客の場合、「隣に男性客が座る可能性を潰す」目的もあるようだ。
当然ながらキャンセル料は発生するが、価格競争が熾烈な高速バス業界では、気軽な利用を促すためにキャンセル料を低く設定しているケースが少なくなかった。少額の追加出費で数時間の乗車を快適に過ごせるなら喜んで払う、というわけだ。
しかしバス会社にしてみれば、迷惑な話だ。本来なら2席分の売り上げが得られるところ、1席分とキャンセル料しか得られない。







