「構想力・イノベーション講座」(運営Aoba-BBT)の人気講師で、シンガポールを拠点に活躍する戦略コンサルタント坂田幸樹氏の最新刊戦略のデザイン ゼロから「勝ち筋」を導き出す10の問い』(ダイヤモンド社)は、新規事業の立案や自社の課題解決に役立つ戦略の立て方をわかりやすく解説する入門書。戦略とは何か。変化の時代に、企業は何を問い直すべきなのか。本連載では、さまざまな経営・組織の悩みをもとに、坂田氏に話を聞きながら、同書の思想を現在進行形の課題へと引き寄せていく

「仕事ですぐに行き詰まる人」に共通する特徴・ワースト1Photo: Adobe Stock

仕事ですぐに行き詰まる人は
「正解」を探している

――仕事をしていると、「ここから先がどうしても見えない」と感じる瞬間があります。なぜ起きるのでしょうか?

 多くの場合、その原因は「正解を探そうとすること」にあります。

 上司に「どうすればいいですか」とすぐ聞く。使えそうなフレームワークを探して安心する。競合をベンチマーキングして「これで外していない」と思う。

 生成AIに問いを投げ、「それらしい答え」を受け取って満足する。

 どれも一見、合理的で賢い行動に見えます。

 しかし、実はこれこそが最も行き詰まりやすい思考パターンなのです。なぜなら、その発想の出発点には「答えはどこかにある」という前提があるからです。

――なぜ多くの人が、正解を探す思考に陥るのでしょうか?

 私たちは長い間、「答えがある世界」で訓練されてきました。正解は一つで、先生が持っている。それを当てることで、優秀だと評価される。

 さらに、戦後の日本には、事実上の“お手本”がありました。米国型の製造業モデルという成功例があり、それを改善し、効率化し、追いつき、追い越すことが成長戦略でした。つまり、探せば答えがあったのです。

 しかし、いまの時代は違います。

 市場も技術も前提も目まぐるしく変わり、昨日までの成功パターンが、今日には通用しなくなります。もはや「正解」はどこかに用意されているものではなくなりました。

 それにもかかわらず、私たちの思考様式だけが、いまだに外に答えを探し続けているのです。

決定的な違いは「How」か「Why」か

――では、行き詰まる人と、そうでない人の違いはどこにあるのでしょうか?

 違いは、思考の出発点です。

 行き詰まる人は「How」から入ります。どうやってやるのか。業界ではどうしているのか。成功企業は何をしているのか。使えるフレームワークは何か。外に正解を求めて、常に「やり方」から入ります。

 一方で、行き詰まらない人は「Why」から入ります

 なぜそれをやるのか。何が本当に重要なのか。そもそも解くべき問題は何なのか。答えがないことを前提に、その時点での最善解を自分でつくろうとします。

――なぜ、How型思考だと行き詰まるのでしょうか?

「なぜやるのか」を自分で考えていないからです。

 上司やAIに答えを出してもらったり、フレームワークを当てはめることは、ある前提が成り立っている間は機能します。

 しかし前提が少しでも変われば、途端に使えなくなります。その瞬間に止まるのです。自分で問いを立てていない人は、前提が崩れたときに修正できません。なぜなら、自分の中に思考の軸がないからです。

 生成AI時代は、この傾向をさらに強めます。AIは高速で「それらしい答え」を出してくれます。

 しかしそれは過去データの平均値を整えたものであり、あなたの状況に完全に最適化された答えではありません。そこに気づかないまま、便利さに依存すればするほど、自分で問いを立てる力は弱くなります。

――いまの時代、How型思考にはリスクがある、ということですね。

 組織にHow型思考の人が増えると、非常に危険です。誰も問いを立てなくなり、それまでの前提が崩れた瞬間に全員がフリーズします。上司の指示が出るまで動かない。AIの答えが出るまで動かない。

 その結果、組織はゆっくりと、しかし確実に思考停止へと向かいます。

行き詰まらない人になるために、何を変えるか

――では、どうすればいいのでしょうか?

 答えはシンプルです。常に「何が問題なのか」を問い続けることです。

 商品が売れない。なぜか?
 社員が辞める。なぜか?
 自分の提案が通らない。なぜか?

 上司から頼まれた仕事であっても、その目的を問い直す。

 それは本当に必要なのか?
 何を解決するための仕事なのか?
 首を縦に振る前に、まず考える。

 壮大な戦略テーマから始める必要はありません。日常の小さな違和感に対して「なぜ」を重ねることが重要です。

 この習慣を持つ人は、前提が変わっても止まりません。問いを自分で持っているからです。

 答えがどこかにあると思った瞬間、思考は停止します。問いを持つ人にだけ、突破口は生まれます

 そしてその差は、テクニックではなく、思考の姿勢の違いから生まれます。そこに気づけるかどうかが、これからの時代に伸び続ける人と、行き詰まる人の分岐点になります。

――ありがとうございました。

坂田幸樹(さかた・こうき)
IGPIグループ共同経営者、IGPIシンガポール取締役CEO、JBIC IG Partners取締役。早稲田大学政治経済学部卒、IEビジネススクール経営学修士(MBA)。ITストラテジスト。
大学卒業後、キャップジェミニ・アーンスト・アンド・ヤング(現フォーティエンスコンサルティング)に入社。日本コカ・コーラを経て、創業期のリヴァンプ入社。アパレル企業、ファストフードチェーン、システム会社などへのハンズオン支援(事業計画立案・実行、M&A、資金調達など)に従事。
その後、支援先のシステム会社にリヴァンプから転籍して代表取締役に就任。
退任後、経営共創基盤(IGPI)に入社。2013年にIGPIシンガポールを立ち上げるためシンガポールに拠点を移す。現在は3拠点、8国籍のチームで日本企業や現地企業、政府機関向けのプロジェクトに従事。
単著に『戦略のデザイン ゼロから「勝ち筋」を導き出す10の問い』『超速で成果を出す アジャイル仕事術』、共著に『構想力が劇的に高まる アーキテクト思考』(共にダイヤモンド社)がある。