いま、「『金持ち父さん 貧乏父さん』以来の衝撃のお金の戦術書」と絶賛されているのが、ニック・マジューリ著『JUST KEEP BUYING』だ。そしてついに全世界待望のお金の戦略書『THE WEALTH LADDER 富の階段』が日本上陸。今回は『お金の大学』の両学長やスコット・ギャロウェイも絶賛する最新刊について、一橋大学特任教授の楠木建氏に寄稿いただいた。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

【一橋大学特任教授が教える】いま投資戦略を学ばない人の末路・ワースト1Photo: Adobe Stock

「マイクの法則」と投資戦略

『道端の経営学――戦略は弱者に学べ』という本を監訳したことがある。
 著者の一人、マイケル・マッツェオはこの本の中で「マイクの法則」なるものを提唱している。

【マイクの法則】
 すべての戦略的問題の答えは「場合によりけり」である。
 結論1
 答えを見つけ出す秘訣は、それが「何によりけり」かを知ることだ。
 結論2
 問題の答えが「何かによりけり」でなければ、それは戦略的問題ではない。

 トリッキーに聞こえるが、戦略の本質を衝いていると思う。
 戦略に「こうやったらうまくいく」という意味での再現可能な法則はない。

 ベストセラーとなった『JUST KEEP BUYING』の著者(ニック・マジューリ)による続編が本書『THE WEALTH LADDER 富の階段』である。

 前作の目的は、状況にかかわらず誰にでも有用な原理原則(ただし「法則」ではない)を示すことにあった。
 本書はより具体的な投資戦略を説く。
 テーマが「戦略」である以上、「何によりけり」かが大切になる。

「富の階段」と「6つの階級」とは?

 その答えは本書の言う「富の階段」にある。
 著者はその人の純資産(資産から負債を引いた額)の大きさを基準に、資産レベルを6つに分けている。

レベル1――低所得者階級(資産1万ドル未満)
レベル2――労働者階級(資産1万ドル以上~10万ドル未満)
レベル3――中流階級(資産10万ドル以上~100万ドル未満)
レベル4――上流中流階級(資産100万ドル以上~1000万ドル未満)
レベル5――上流階級(資産1000万ドル以上~1億ドル未満)
レベル6――超富裕層(資産1億ドル以上)

 もし突然100万ドルのお金が入ってきたら、人生は変わるだろうか。
ほとんどの人にとって、100万ドルはライフスタイルに相当のインパクトを与えるだろう。

投資戦略も「資産によりけり」

 しかし、最上位のレベル6にいる人にとっては、取るに足らないものでしかない。
 資産レベルが違えば、お金の使い方から、稼ぎ方、投資法、あらゆる側面で有効な戦略は異なってくる。

 投資戦略はその人の「資産によりけり」なのだ。

 相手が肥満の人かアスリートかによって、フィットネスコーチの食事や運動についてのアドバイスは変わってくる。

 これと同じ話で、その人の現在の保有資産がどのレベルにあるかによって、ファイナンスのアドバイスは大きく変わる。

 世の中に溢れている資産形成の指南書はしばしば相互に矛盾した主張をしている。
 ある人は「家計管理をしっかり行い、節約を心がけろ」と言う。
 別の人は「リスクを取った投資でなければ大きな資産を築くことはできない」と言う。

 それぞれに正しい面があるのだが、誰に向けたメッセージなのか、念頭に置いている対象が違う。

 レベル1にある人に未上場のスタートアップへの投資を勧めても意味がない。

これまで投資戦略を学んでこなかった人へ

 本書が提示する「富の階段」は、読者が自分の置かれている状況を客観的に把握し、投資や資産形成の方法について従来の「思い込み」や「落とし穴」から逃れるためのフレームワークを提供している。

(本稿は、『THE WEALTH LADDER 富の階段』に関する完全書き下ろしです。)