「アルツハイマー病」の検査精度が飛躍的にアップ、症状だけじゃない「客観的」な判断法とは?写真はイメージです Photo:PIXTA

認知症の原因で最も多いアルツハイマー病。新たなメカニズムの治療薬として、エーザイと米バイオジェンの「レカネマブ(商品名:レケンビ)」、米イーライ・リリーの「ドナネマブ(商品名:ケサンラ)」が承認を受けた。新薬の普及と開発を進める上では、脳内の病変を正確に捉える「バイオマーカー(指標)」の確立が鍵となる。「血液バイオマーカー検査の精度が飛躍的に向上している」と語るのは、東京大学医学部附属病院特任教授で日本認知症学会前理事長の岩坪威(たけし)さん。最新の状況について話を聞いた。(取材・文/西野谷咲歩)

新薬「レケンビ」「ケサンラ」
の使用前に必要な検査

 2025年5月16日、認知機能低下を示す人を対象に、血液でアルツハイマー病の診断を補助する検査薬として、世界で初めてH.U.グループホールディングス傘下の「富士レビオ」の「Lumipulse G pTau217/ß-Amyloid 1-42 Plasma Ratio」が、アメリカ食品医薬品局(FDA)に承認されました。同社は11月25日、国内で承認申請したと発表しました。

 血液検査薬は、診断薬メーカーの米C2N Diagnostics LLCをはじめ、米イーライ・リリーや、スイスのロシュなどの製薬会社、日本ではエーザイ、シスメックス、島津製作所など開発に取り組む企業が多数あります。

 アルツハイマー病の原因物質の一つとされるたんぱく質「アミロイドベータ(Aβ)」を脳内から除去するレケンビやケサンラなどの「抗Aβ抗体薬」を使用するには、まずAβの蓄積を確認して、どの程度進行しているかを調べる必要があります。

 日本では、高額で保有施設が限られるアミロイドPET(陽電子放射断層撮影装置)検査や侵襲性の高い脳脊髄(せきずい)液(CSF)検査を行って、Aβ蓄積の度合いを確認しなくてはなりません。