「アルツハイマー病」の検査精度が飛躍的にアップ、症状だけじゃない「客観的」な判断法とは?岩坪 威さん 2025年11月20日まで日本認知症学会理事長を務めた 写真提供/本人

 総合的な判断を行うことを条件として、CSFやアミロイドPET検査で陽性だった人を、「陽性」と正しく識別できる確率(感度)が90%以上、かつ陰性だった人を「陰性」と正しく識別できる確率(特異度)が75%以上の場合は、スクリーニング(ふるい分け)検査として、感度・特異度ともに90%以上の場合はアミロイドPET検査やCSF検査の代替手段とすることを推奨しています。

「現状、血液バイオマーカーは、アミロイドPETとCSFに比べて精度が及ばないものもあり、検査によってばらつきもあるため、限界があります。まずは抗体薬の治療希望者で、Aβ蓄積が疑われる人に対し、アミロイドPET検査などを実施する前のプレスクリーニングとして使うことは可能です。患者さんの負担だけでなく、経済的な負担も軽減できるでしょう」(岩坪さん)

 また、「アルツハイマー病の診断は二つに分けて考える必要がある」と指摘します。

「物忘れ」などの症状だけではなく
客観的な病理診断も

 近年、多くの疾患は、病理(体内で起きていること)に基づいて診断するのが標準になってきました。

 例えば、がんには、進行度(ステージ)を評価する「TNM分類」という国際的な指標があります。「T(Tumor=原発腫瘍)」はがんの大きさや浸潤(周囲の組織や臓器への広がり)の深さ、「N(Node=リンパ節)」はリンパ節への転移の有無と範囲、「M(Metastasis=転移)」は他の臓器への転移の有無、という三つの要素をそれぞれ評価。治療方針などを決定します。

 従来、アルツハイマー病は、物忘れなどの症状に重きを置いた診断を行っていました。近年、検査技術の発達により、病理学的な変化を客観的な証拠に基づいて診断ができるようになってきています。

 2024年、米アルツハイマー病協会などが発表したアルツハイマー病の診断に関するガイドラインでは、アミロイド(A)、タウ(T)、神経変性(N)の頭文字を取った「ATN分類」の考え方を診断基準に初めて導入しました。