「なぜ彼は迎えに来なかったのか」

 ヘブンは「すばらしい通訳」「すばらしいお世話係」と精いっぱい褒めるが、錦織はナットクしていない様子だ。

 だがヘブンは錦織の気持ちを考えている場合ではなく、金縛りに夢中。

 その晩から、ヘブンは寝ずに、金縛りを待つようになったが、母に会うことはかなわず、朝になって「眠い 寒い」とトキに愚痴る。

「ええなあ金縛り」とやっぱりトキの感性はちょっとヘン。

 最近のトキはまったく金縛りにあっていないので、ヘブンがうらやましい。

 トキは金縛りを心霊現象と考えているが、現実的には、睡眠不足と不規則な睡眠リズムによって起きる睡眠まひ。ストレスや不規則な就寝、起床や、動きにくい仰向けの姿勢での睡眠も原因になると言われている。

 つまりトキが金縛りに最近あわないのは、おそらく、20円の給金によって生活事情が格段に良くなったからではないだろうか。食事事情もよくなっているようだし、女中の仕事でカラダを動かしているし、規則正しい生活のうえ、ヘブンとの関係性も楽しく、精神的にも調子が良さそうだから金縛りにあうことがなさそう。

 母は出ない代わりに男が出てきたというヘブン。男の正体は錦織。

「幽霊、錦織さん、ベリーべりーアングリー」

 夢のなかで彼に首を締められていることを動作でトキに伝えるヘブン。

 錦織の強烈な思念がヘブンに伝わるというオカルト現象なのか、その朝、錦織は迎えに来なかった。学校にもいない。

 今日の英語の聞き取り授業の題材は、錦織に関すること。

「なぜ彼は迎えに来なかった」「会っても態度がよそよそしい」「いつもそこで見てるのにそこにもいない」とヘブンはいま気になっていることをつぶやく。恋仲か。

 錦織のヘブンへの気持ちが気になるが、次週予告は、

「次回ついにアレが来るのよ」
「アレ?」
「アレよ?」
「どのアレ?」

 蛇(渡辺江里子)と蛙(木村美穂)が大はしゃぎ。

 アレとは「怪談」である。

 トキがゆらぐろうそくの前で「お待たせいたしました」とおもむろに怪談語りをはじめるのか。

 怪談が中心のドラマではないとあらかじめ断っていたけれど、やるときはやってくれるようだ。

吉沢亮が思い詰めた表情で演じる“お世話係”、まるで「恋仲」なセリフに突っ込みたくなる〈ばけばけ第55回〉
吉沢亮が思い詰めた表情で演じる“お世話係”、まるで「恋仲」なセリフに突っ込みたくなる〈ばけばけ第55回〉