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憧れの別荘地に家を建てて、いつか悠々自適に暮らしたい――。そんな思いで購入した土地が、自分の死後、遺された家族に悲劇をもたらすこともある。実際にあった事例をもとに、虎ノ門法律経済事務所横須賀支店の中村賢史郎弁護士に話を聞いた。(ライター 岩田いく実、監修/虎ノ門法律経済事務所 中村賢史郎弁護士)
「えっそんな土地あったっけ?」
亡父が残した那須高原の土地
「夢の別荘ライフ」「老後の悠々自適な生活」――。今から約30年前、1990年代はバブル崩壊後もリゾートブームが続き、関東近郊や北海道などの別荘地は多くの会社員にとって「いつかは手に入れたい憧れ」でした。しかし、憧れの別荘地は所有者だった家族が亡くなられた後に「負動産」として相続トラブルを引き起すケースも多々あります。
本記事では、リゾートブームで購入した土地の行方に翻弄(ほんろう)された相続トラブル事例を紹介します。
都内在住の会社員、浩二さん(50歳・仮名)。浩二さんは、先日亡くなった父・幸雄さん(享年75歳・仮名)が残した、ある「土地」について頭を抱えていました。
「まさか、父が残したものが、こんなに厄介な存在になるとは思いませんでした」
幸雄さんが残したのは、栃木県・那須高原に位置する120坪の土地。幸雄さんは東京の下町に生まれ、大学卒業後に中堅医療機器メーカーに入社。安定した収入を得ていたこともあり、バブル経済崩壊後の1995年頃にこの土地を購入しました。
那須高原エリアは1950年代後半から観光開発化が進み、新幹線の開通やバブル経済が後押しをした結果、人気が高まりましたが、バブル経済崩壊後は徐々に人気が低迷。しかし、幸雄さんが購入した頃はまだまだ人気があったのです。当時坪単価は約3万円、幸雄さんは税金なども含めて約400万円で購入していました。
温泉の権利を購入すれば別荘内で温泉も楽しめることから、「いつかここに家族で過ごす別荘を建てる」と妻のよし子さんに夢を語っていたそうです。
しかし、別荘が建つことはなく、幸雄さんはよし子さんと定年後も那須ではなく都内近郊のマンションに住み続け、この土地は手つかずで残されました。
そして今、よし子さん(72歳)と浩二さんの二人が、この不動産を相続することになったのです。







