「ストレス」と聞くと悪いものに思いますが、人間は光も匂いも、音もなく、他者も存在しないようなストレスのまったくない世界では生きていけません。ストレスは人にとって「生きていくために絶対に必要な刺激」でもあるのです。

過剰なストレッサーが
命に関わる疾患を招くことも

「ストレスとは人生のスパイスである」

 これはストレッサーの生体反応を明らかにした生理学者、ハンス・セリエの言葉です。

「ストレスは決して悪いものではなく、人生を彩るスパイスですよ」と語るこのフレーズは、私がとても好きな言葉の1つです。

 この言葉のとおり、ストレスはうまくハマればよい刺激になりますし、人はストレスを求めてもいます。例えば職場で責任ある立場になることは、自分を奮い立たせるよいストレスになりますし、香水をつけるのは「香り」というストレッサーを欲しているからです。

 では、なぜ問題が生じるかというと、ストレッサーが過剰になるからです。

 ストレッサー(刺激)には「通常の刺激」と「過剰な刺激」があり、人は過剰なストレスにさらされ続けると心身にひずみが生じ、ストレス反応が起きます。

 過剰なストレスの影響は心だけでなく身体にも現れ、さまざまな不定愁訴(肩こりや腰痛、イライラなど原因がはっきりしない不快感)や疾患の原因になります。

 よく「ストレス太り」という言葉を耳にしますが、実際、肥満もストレス反応の1つ。最悪、心疾患や癌など命に関わるような疾患の要因になるともいわれています。

ストレスに対抗するには
嘘でもいいから笑うこと

 ストレスへの耐性は受け手によって異なります。

 例えば、職場の上司に「プロジェクトに失敗したことで1億円の損失が出たじゃないか!」と激怒されたとします(ストレッサー)。

 すると「取り返しのつかない大変なミスを犯してしまった」と気に病み、腹痛が起きたり鬱症状が出たりといったストレス反応を起こす人がいる。

 一方で、「別に1億円くらい大したことないじゃん」と強いストレス反応が起きない人もいます。