「身近な人が亡くなったら即確認!」“未支給年金”は申請しないともらえません!
大切な人を亡くした後、残された家族には、膨大な量の手続が待っています。しかも「いつかやろう」と放置すると、過料(行政罰)が生じるケースもあり、要注意です。本連載の著者は、相続専門税理士の橘慶太氏。相続の相談実績は5000人を超え、現場を知り尽くしたプロフェッショナルです。このたび、最新の法改正に合わせた『ぶっちゃけ相続「手続大全」【増補改訂版】』が刊行されます。本書から一部を抜粋し、ご紹介します。

「身近な人が亡くなったら即確認!」“未支給年金”は申請しないともらえません!Photo: Adobe Stock

そもそも未支給年金とは?

 老齢年金は、「4月分と5月分は6月支給」というように、後払いの形で支給されます。

 そのため、年金受給者が亡くなると必ず「未支給年金」が発生します。「未支給年金」は年金受給者と生計を同じにしていた人がいる場合には「未支給年金請求書」を提出することで、

 請求者が取得することができます。なお請求手続をしない場合で、既に「未支給年金」が故人の通帳に振り込まれている場合は、一定の場合を除き、当該年金は過払いという扱いになり、返納する義務を負う可能性が出てきます。

未支給年金の具体例

ケース① 5月に年金受給者が亡くなった場合
→未支給年金は4月分と5月分になります。
(4月分と5月分の年金は6月に支払われるため未支給)

ケース② 6月14日に年金受給者が亡くなった場合
→未支給年金は4月分と5月分と6月分になります。
(4月分と5月分は6月15日に支払われるため未支給となり、また6月分は8月に支払われるため未支給)

ケース③ 6月15日に年金受給者が亡くなった場合
→未支給年金は6月分となります。
(4月分と5月分は6月15日に支払い済みのため未支給にはなりません。なお6月分は8月に支払われるため未支給)

未支給年金の受給要件

 未支給年金は亡くなった年金受給者と生計を同じにしていた人で、以下の優先順位が高い人がもらえます。一般的な遺産と異なり、遺産分割協議の対象になりません。

優先順位(高い)「配偶者」→「子」→「父母」→「孫」→「祖父母」→「兄弟姉妹」→「三親等以内の親族」(低い)

未支給年金の請求手続

 未支給年金は遺族年金と同じで、請求手続をしないともらうことはできません。「未支給年金請求書」に添付書類をつけて年金事務所に提出する必要があります。

未支給年金の課税関係

 未支給年金は相続財産ではなく、支払いを受けた人の一時所得として所得税の課税対象となります。一時所得なので、その他の一時所得と合算して50万円(特別控除額)以下であれば所得税は発生しません。

未支給年金を受給できないケース

 故人と生計が同じでない場合には、たとえ相続人であっても、未支給年金を受け取ることはできません。「生計が同じ」というのは、基本的には、故人と同居していたことを指しますが、別居の場合でも、継続的に経済的な援助(仕送り)が行われていた場合などには生計同一と認められることもあります。この場合には、「生計同一関係に関する申立書」を年金事務所へ提出する必要があります。

 なお、生計同一の同順位の人が複数いる場合(例えば、故人に配偶者がおらず、子2人と同居していた場合など)には、代表者が請求を行い、給付を受けた後に当事者で分け合う形になります。

(本原稿は『ぶっちゃけ相続「手続大全」【増補改訂版】』の一部抜粋・編集を行ったものです)