「経営学の父」と呼ばれるのは誰か、あなたは即答できますか?
その名は――ピーター・ドラッカー。
彼が残した言葉は、時代を越えて世界中の経営者やビジネスパーソンの指針となっています。なぜ没後20年近く経った今も、ドラッカーは読み継がれ続けるのか。
『かの光源氏がドラッカーをお読みになり、マネジメントをなさったら』の著者である吉田麻子氏に、現代にこそ響くドラッカーのメッセージを伺いました。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局 吉田瑞希)
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ダメな採用、いい採用は何が違う?
――ダメな採用といい採用はどのような違いがあるのでしょうか?
吉田麻子(以下、吉田):ドラッカーは『マネジメント』で「経営資源の目標」についてこう述べています。
さらに、
を問うべきであると述べています。
採用とはマーケティングであり、「人を選ぶ」以前に、“人から選ばれる組織になっているか”が問われる――。
つまりドラッカーは、半世紀以上前に“採用はマーケティングである”と明言していたのです。
ダメな採用とは?
・求人票に具体性がなく、実態が伝わらない
・カルチャーを良く見せすぎる
・面接が“圧迫か雑談”のどちらか
・候補者が不安を感じるほど連絡が遅い
・入社後のフォローがほぼ無い
こうした採用では、優秀な人ほど早い段階で違和感を持つかもしれません。
では、良い採用とは?
吉田:良い採用には、ドラッカーが言う「マーケティング的な視点」があるのではないでしょうか。
◻︎この組織はどんな価値を外に生み出しているのか
◻︎この仕事はどんな強みを発揮できるのか
◻︎どんな成長の機会が用意されているか
候補者が安心して理解でき、未来が描けるかどうかが重要です。
そのために必要なのは、
・求人票に具体性がある
・面接でお互いを率直に理解し合う
・無理に良く見せず、実態をそのまま伝える
・その人の強みが“どこでどう生きるか”を一緒に考える
・入社後のオンボーディング(導入支援)が整っている
こうした丁寧さが欠かせないといえるでしょう。
採用の本質は引きつけ、未来を見せること
吉田:採用とはマーケティング。
良い採用とは、候補者が“ここで働く理由”と“ここで輝ける未来”を感じ、「ここで自分の強みが生きる」と確信できる採用です。
組織にとっても、個人にとっても、採用はただのスタートではなく、“未来の関係をつくる一番大切な瞬間”なのです。
つまり、良い採用とは――相手をよく見て、強みが生かせる場所を誠実に提示すること。
ダメな採用と良い採用を分けるのは、この「誠実さ」と「未来を示す力」なのではないでしょうか。



