その際の注意点として、他に相続人候補者がいる場合(兄弟姉妹ら)は、必ず他の相続人候補者とともに財産を明らかにするか、他の相続人候補者の許諾を得て財産の調査をしましょう。他の相続人に知らせずに親の財産の調査などをすると、将来的に不明出金等が出てきた場合に争いになる可能性が非常に高くなるため注意しましょう。
相続後に売却が予定される不動産は、親自身が生前のうちに『子に負担をかけないよう処分する』準備も検討しましょう。家族を思って購入した物を手放すことは心苦しいかもしれませんが、年齢を重ねるとどうしても遠い別荘地などの管理は難しくなります。
生前の不動産処分であれば、諸経費は親の意思で親自身の財産から支出すればよく非常にシンプルですが、死後の処分となると処分費用について適宜、他の相続人の許諾を得つつ進めなければならなくなるなどの問題が発生するため、非常に手間がかかります。
相続土地国庫帰属制度の利用は
現状ではハードルが高い
――価値のない土地を国に引き取ってもらう「相続土地国庫帰属制度」も話題ですが、こちらは利用できませんか。
中村:国庫帰属制度は画期的な制度ですが、残念ながら万能薬ではありません。引き取ってもらうための要件が非常に厳しく、負動産ははじかれてしまうことが多いという落とし穴があります。
最大の難しさは、「管理が難しい土地は引き取らない」という点です。別荘地などで管理組合への年会費や維持費の支払い義務が残っている土地は、国に引き継いだ後も国が管理費用を負担し続けることになるため、原則として不承認になることが多いです。
結局のところ、国が引き取ってくれるのは、『国が維持管理に一切お金と手間をかけずに済むことが確実な、限られた土地』だけであり、そのような土地は売却が可能なことが多いため、この制度の利用局面はかなり限定されているといえるでしょう。制度を過信せず、まずは売却を目指す方が現実的です。
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父が30年前に夢見た別荘地は、維持費を垂れ流す「負動産」となり、母子の原野商法の二次被害まで発生してしまいました。
こうした負の連鎖を起こさないためには、生前から親子で財産について話し合うことが大切です。売却困難な土地は、管理費や詐欺リスクを避けるため、損切り覚悟で早期に処分も検討しましょう。
※プライバシー保護のため、登場人物に関する情報の一部を変更しています。
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