協力金で生き延びた店舗が
物価高で事業継続を断念
新型コロナが拡大した当初、飲食店の倒産急増が懸念されたが、2021年から22年にかけて激減した。店舗の休業や時短営業に伴い給付された協力金の影響が大きかったとみられる。1日1店舗あたり6万円が振り込まれたケースもあった。
「コロナ禍で得た休業や時短営業に伴う協力金が売り上げを上回り、倒産を回避した飲食店が一定数存在した」「もともと経営に苦しんでいた経営者の中には、このままコロナ禍が続いて欲しいと言う人もいた」(都内の地域金融機関関係者)
飲食店経営事業者は、家族経営や1店舗経営といった小規模事業者が大半を占めており、給付金によってコロナ禍前よりも資金が潤沢になり、倒産を回避した事業者が相当数存在したとみられる。
しかし、アフターコロナでは国からの資金支援が無くなり、競争激化や食材費・人件費の高騰など、新たな問題に直面し、経営が悪化する店舗が急増した。さらに、接待や忘年会、新年会、二次会などの需要減少で、事業継続を断念する事業者が相次いでいる。
また、倒産が激減した時期に倒産した事業者の共通点について、複数の都内地域金融機関の融資担当者は「その多くが一見さんだった」と口を揃える。
「金融機関から融資を受けずに事業を続けてきた零細事業者がコロナ禍で資金繰りに行き詰まり、はじめて金融機関を訪れてゼロゼロ融資を受けたケースが多数ありました。しかし、返済に行き詰まると諦めて、私たちに何の相談も無く弁護士事務所を訪れて破産を申し立ててしまうのです。それまで金融機関と取引経験がなかったので、相談するという発想が無かったのでしょう。相談してくれれば返済猶予など対応できたこともあったのに…」(前出の金融機関担当者)。
そうしたなかにも飲食店経営事業者が一定数含まれていたようだ。
厚生労働省のデータによると、営業許可を受けている国内の飲食施設は約142万施設にのぼる。施設数が多い分、競争相手も多く、また流行の入れ替わりも激しい。その分、倒産件数も多くなる。
食材の仕入れ価格が落ち着く気配はない。これから年末年始にかけて繁忙期に入る飲食店業界だが、12月末をもって閉店した店舗を年明けにあちこちで見かけることになるかもしれない。







