ChatGPT「非常事態宣言」でサム・アルトマンが焦るGoogleだけじゃない〈敵〉の正体オープンAIのサム・アルトマンCEO Photo:Andrew Harnik/gettyimages

「ChatGPT」を開発した米オープンAIのサム・アルトマンCEOが、社内に「非常事態」宣言を出した。AI分野で競合の追い上げに、大きな危機感を抱いているのだ。最大のライバルはグーグルだが、敵はそれだけではない。中国のアリババやディープシークが、政府から手厚いサポートを受けて急速に台頭している。オープンAIの独走はいつ崩れるのか?世界的な再編に発展すれば、AIに完全に出遅れた日本勢にもチャンスが訪れそうだ。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)

ChatGPT社内で「非常事態」宣言の衝撃

 12月1日、米オープンAIのサム・アルトマンCEOが、「コードレッド(非常事態)」宣言を出した。生成AI「ChatGPT」の改良を優先し、総動員で取り組むために社内のリソースを集中的に振り向けるよう指示した、などと報じられている。

 背景にあるのは、AI関連の開発競争が一段と激化していることだ。オープンAIのライバルである、グーグル、メタ、アマゾンが急速にAIモデルや新型の半導体の開発体制を拡充している。中でも、アルトマン氏はグーグルに対する警戒を強めているとみられる。

 11月、グーグルは新たなAIモデルの「Gemini(ジェミニ)3」を公表。自社開発したAIチップ「アイアンウッド」の外販も本格始動した。AI分野の専門家や一部の株式アナリストは、ジェミニのユーザー獲得スピードがオープンAIを上回る可能性を指摘している。

 しかし、それだけではない。アルトマン氏は、中国企業の成長スピードにも危機感を強めている。中国政府は国を挙げてAI企業をサポートし、アリババやディープシークは主にオープンソースでAIを開発している。オープンソース型AIの性能では、中国はすでに米国を上回ったとの指摘もある。

 AI分野には今後も新規参入が増え、AIモデル、半導体の開発競争は一段と激化するだろう。AIチップ分野でのエヌビディア、AIソフトウェアでのオープンAIの独走状態は、徐々に崩れることになりそうだ。

 こうした世界のAI分野の変化を、わが国企業もみすみす逃してはならない。ビジネスチャンスにもなり得るし、一方で、この機を逃せば日本経済はじり貧状況からの脱却がさらに難しくなる。どういうことか。