新型コロナウイルス流行期
多くの人が病院なしで回復

 新型コロナウイルス感染症の流行は、図らずも一つの実験になった。医療機関での感染を恐れて受診を控えた人々の行動を見ると、興味深いデータが出ている。

 持病がない人の約2割が受診を控え、そのうち6割が「受診なしで体調回復」、7割が「市販薬で対処」したという。つまり、「多くの軽症患者は、実は病院に行かなくても問題はなかった」ということだ。

 私はこれを「日本人の医療依存体質からの解放」の兆しだと捉えている。

 実際、風邪や頭痛、胃もたれなどの軽症であれば、基本的に市販薬(OTC薬)で十分対応できることが多い。しかも、診察料や処方料を含めた総額で比較すると、多くの場合、市販薬の方が安い(もちろん日本のOTC薬は海外より高価なのでもっと値段を下げるようにしないといけない)。これは受診時に薬代以外にも初診料や処方料などがかかるためだ。

 にもかかわらず、なぜ人々は病院に行くのか。それは「保険が効くから」や「医者に診てもらった方が安心」という理由に尽きるのではないか。この「値ごろ感」と「他人任せ」が、本来不要な受診を生み出している。

 欧米諸国を見てみよう。

 アメリカでは、軽症の場合は薬局で薬剤師に相談し、OTC医薬品を購入するのが一般的だ。イギリスでは、薬剤師が軽症患者の初期対応を行い、必要に応じて医師への紹介を行うシステムが確立している。風邪やインフルエンザで医療機関へ行き医師に診てもらうという発想自体がそんなにないのだ。

 これらの国では、医療資源は本当に必要な人のために使うという考え方が徹底している。軽い頭痛で病院に行くなんて、彼らからすれば信じられない行為なのだ。

 日本でも、実はこうした動きは始まっている。セルフメディケーション税制という制度があり、年間1万2000円を超えるOTC医薬品の購入費用は所得控除の対象になる。しかし、利用者は全体のわずか0.33%。ほとんど知られていないし、使われていない。