「重篤な病気を見逃すリスクがある」という医師会の主張は理解できる。トレードオフで難しい問題であるが、天秤に掛けられている医療保険制度破綻のリスクと比べつつ、適切な選択をしていくしかない。十分な広報と教育、医療機関へのフリーアクセスなどを維持することによって、リスクの捉え方や対処法を仕切り直して整備すれば、すべての軽症患者が医師の診察を受ける必要はないという原則を実行できるだろう。

「低所得者層の負担が増える」という指摘もある。だからこそ、OTC薬の拡大と、価格を低下させること、そしてセルフメディケーション税制の拡充が必要なのだ。さらに、低所得者向けの補助制度を設けることも検討すべきだろう。

「地方にはドラッグストアが少ない」という地域格差の問題は、オンライン販売の規制緩和で解決できる項目だ。すでに第一類医薬品もネットで買える時代だ。地理的制約を理由に改革を止める必要はない。

思考停止・便乗思考をやめて
医療を次世代につなぐ選択を

 私たちは選択を迫られている。

 このまま野放図に医療費の増大を放置し、医療保険制度を破綻させて将来世代に巨額のツケを回すのか。それとも、今、行動を起こして持続可能なシステムを作るのか。

 年間1兆円。これは決して小さな金額ではない。この資金があれば、本当に医療を必要とする人々への支援を充実させることができる。あらたな治療法の研究開発に投資することだってできる。

 大切なのは、「病院に行けば安心」「とりあえず受診」「ドラッグストアで買うより安くて早くて便利」などという思考停止や便乗思考から脱却することだ。自分の健康は自分で管理する。軽症なら市販薬で対応する。リスクはある程度自分で引き受ける。これは決して「医療の切り捨て」ではない。限られた医療資源を、本当に必要な人に集中させるための、合理的な選択なのだ。

 私は信じている。日本人には、この変化を受け入れる知性と柔軟性、なにより覚悟があることを。