トキ、「師匠」と呼ばれる→手紙にびっくり

 毎晩欠かさず怪談を語っているというトキの話に錦織はムッとすることなく、むしろ顔が明るくなっていく。ヘブンに対して屈折した態度をとったり、誰に対してもなにかと負けず嫌いな態度をとったりしてきた人なので、嫉妬深いのかと思ったが、ここでは素直によかったという顔をしている。真面目な善人なのだろう。

 このとき、窓辺に夕日が差し込んできて、窓枠が照らされている。その光に清明さと錦織の笑顔が呼応する。

 花田旅館でおなじみの場所。2階の喫茶スペースの窓辺。この窓が美しい。美術スタッフによると「茶店は元甘味処の設定でみんながなごやかに集う場所でもあり、和菓子の和(輪)で丸い窓にし、少しおしゃれなデザインにしました」とのことだ。

「いや、しかしなるほどその様子だと怪談がラストピースだと思って間違いなさそうだな」

 錦織は、ヘブンの研究(滞在記)が完成することを心底気にかけているようだ。彼ら勉学を生業とする者たちには勉学こそがなにより大事なのだと思う。

 滞在記の大事な部分を担うことになるのは「うれしいやら荷が重いやら」と単純にはしゃぐトキに、錦織はふと顔を曇らせる。背後に映る窓枠の淡い影のように。

「先生は新聞記者で、滞在記を書くために日本に来ている。そして怪談がラストピースであるとすれば、怪談のことを書き上げれば滞在記は完成し、先生は目的を達する。つまりだ。君が怪談を語れば語るほど滞在記は完成に近づき、先生はここからいなくなるということになる」

 トキは思いがけない事実を突きつけられて呆然(ぼうぜん)とする。

 ヘブン宅に戻ったトキに、ヘブンは「おトキ師匠」と呼び、怪談をせがむ。

 トキは「頑固な汚れ」とかなんとか言ってはぐらかすが、そんなことで誤魔化(ごまか)されるヘブンではない。

「怪談好き 怪談早く早く」と子どものようにせがみ続ける。トキはほだされて今夜も怪談を語りだした。

 そんなところに、びっくり。

 トキ宛てに懐かしいあのひとからの手紙が届いて……。

 来週はトレンディドラマ的展開か。これには蛇(渡辺江里子)と蛙(木村美穂)ならずともわちゃわちゃしてしまいそうだ。

ほんとそれ!「同じことばかり言ってるうちに…」コメディセンス抜群の女優のセリフが、人生の真理を突いていた〈ばけばけ第60回〉
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