しかも、支援した装備品は、殺傷能力のあるものを避けました。これを日本の国力に比して大きいと見るか、それとも小さいと見るか、どちらでしょうか。

ロシアもウクライナも
理解不能だった必勝しゃもじ

 また、覚えている人も多いと思いますが、あのとき岸田総理は「必勝しゃもじ」を渡しました。

 たしかに日本では、しゃもじは「敵を召し(飯)取る」との意味で、験担ぎにも使われることもありますが、冷静に考えて日本とウクライナは8000キロも離れていて、しかも相手は本気で戦争をやっている。そこに、木のへらを渡して「これで勝ってください」と言ったわけです。

 さらに表面には、漢字で「必勝」と書かれている。普段、私たちは当たり前に使っている漢字ですが、表記の難しさや種類の多さから西洋諸国では「悪魔の文字」と言われることもあるんです。

 実はあの後、私は当時のロシア臨時代理大使に呼ばれて一緒に寿司を食べながら話したのですが、彼はあの贈り物に込められたメッセージが分からなかった。しかし、クレムリン(ロシア連邦の中央政府)には何かしらの報告をしないといけません。だから、私に「必勝しゃもじ」の意味を聞きに来たというわけです。

 まず「佐藤さん、あれは政治家の発案ですよね?」と聞かれたので、「官僚から出てこない発想だし、そうだと思う。(岸田さんが)しゃもじを持っていくというのは怖くて誰も止められなかったんじゃないか」と答えました。

 そしたら「なるほど。あれは本気ですよね」と返されたので、私も「本気だと思うよ。しゃれとか遊びでやる話じゃないでしょう」と、こういう会話を交わしました。

 岸田氏は8000キロ離れたところに行き「しゃもじ」――ウクライナの人たちにすればただの木のへらに悪魔の文字が書かれているもの――を渡すことが本気で支援になると思っていたんです。しかし、ロシア人からすれば日本政府の意図が全く理解できなかった。

 結局、ロシアの臨時代理大使はロシア中央政府に「日本の政治エリートには、いまだ無意識においてアニミズムが生きている」と報告をしたそうですが、彼らにとってみても理解不能で、そのようにしか説明できない。