神戸の震災を専門家たちは予見しており、明瞭な形で神戸市長にその調査結果を報告していました。それが1974年の「まぼろしの報告書」と言われる『神戸と地震』という報告書です。
神戸市は1972年に「神戸市における地震対策」調査を大阪市立大学の笠間太郎教授を代表とした研究者に委託し、2年後にその調査報告がまとめられたのです。
調査報告には、神戸市周辺地域には活断層が実在し、「将来、都市直下型の大地震が発生する可能性はあり、その時には断層付近で亀裂・変位がおこり、壊滅的な被害を受けることは間違いない」という明快な記述がありました。
神戸新聞は1974年6月に「神戸にも直下地震の恐れ」と夕刊の一面トップに9段記事を出しました。
この報告書は神戸市長の「なかったことに」という判断で市民に公表されなかったのですが、その他、『神戸地域の地質』(地質調査所)でも、神戸市周辺において今後大地震が発生する可能性は十分にあり、壊滅的な被害を受ける確率は大きいとありました。
地震活動期から逆算すると
南海トラフ地震は2038年
堀高峰さん(編集部注/国立研究開発法人海洋研究開発機構海域地震火山部門 地震津波予測研究開発センター長)と私は、1994年に論文を発表しました。
神戸の大地震の前、西日本内陸活断層帯の地震活動の特性の分析から、南海トラフの巨大地震の前から地震活動期が見られることを指摘しました。
毎日放送はその内容を1995年春に総合的に放送する計画をしていましたが、大地震が先に起こってしまって放送は実現しませんでした。
しかしその準備があったために、毎日放送は本震発生後ただちに活断層帯の空撮を実行できて、これが全国に活断層を広く紹介する放送につながりました。
本震の発生直後、地震予知連絡会の茂木清夫会長が「西日本は地震活動期に入ったと思われる」と発表しました。これによって地震活動期の概念が定着したと思います。
私たちの分析によると、このような西南日本内陸の地震活動期は約60年続き、その最後の方で南海トラフの巨大地震が発生するということが言えます。
1995年から活動期が始まったとすると、次の南海トラフの巨大地震は2040年頃ということになります。さらに統計モデルを現在の実際の地震活動データにあてはめてみると、一応ですが、巨大地震の時期は2038年という計算になっています。







