10分後。視聴回数2回。そりゃそうだよな。昼間だしな。普通はみんな学校か仕事の時間だもんな。もうちょい待とうか。

 30分後。視聴回数3回。あれ?ちゃんと公開できてるのかな?自分しか再生してない感じになっちゃってるけど。

 1時間後。僕はヨドバシカメラのスマホコーナーにいた。デモ機のスマホでYouTubeを開いて「見て損した気分になるパラパラ漫画」と検索して、しっかり世界に公開されていることを確認して、しっかり自分の端末以外からの再生回数を1つ獲得した。

「こんなに面白いのになんで誰の目にも止まらないんだ?」と思いつつ、デモ機の画面をワンタップしたら自分の動画がすぐに再生されるような状態にして帰ってきた。

少しずつ伸びていく
再生回数にニヤニヤする日々

 Twitterなども存在していなかった当時、ブログ以外で自分の動画を宣伝する方法はこれしかなくて、きっと黎明期のYouTuberあるあるの行動だと思う。

 夜になったらいつものようにブログを更新して、そこでYouTubeのチャンネルを立ち上げて動画をアップしたことを報告した。そのおかげで次の日の朝までには再生回数が40回くらいまで伸びた。嬉しかった。

 普段のお笑いライブではお客さんの数が10人とか、20人の日も余裕である中で、自分で再生した分を差し引いても30人くらいは観てくれたのだ。僕が通っていた小学校は1クラス30人だったので、クラス全員が観てくれたくらい凄いことだぞ。

 数字が2ケタまでいったことに気を良くして、その後もポツポツとライブで流した後の動画をアップしていって、60回くらい観てもらえる動画が現れたり、たまに300再生くらいを叩き出すヒット作も現れた。

 芸人仲間たちは、僕がチョクチョクとスマホで自分のYouTubeチャンネルを開いては再生回数が少しずつ伸びてる動画を見つけてニヤニヤする趣味があるなんて誰も知らない。楽しさを共有できる仲間もいない。

 そんな時期が続いたある日、僕ら東京NSC卒業生の2期生以下で日の目を見ていない芸人が一斉に六本木にあるYouTubeスペースに集められた。