ただでさえ「あれ?俺たちって毎日ネタ作りや先輩付き合いを頑張ってるだけで、目標というか、目指してたゴールがなくなってないか?何のためにこんなことやってるんだ!?」って気づくのが怖くて無我夢中で「純度の高いお笑いこそ正義!」って言い聞かせて活動してるんだ。急に知らないお兄さんたちの動画を観せられて「こっちが到達点になりました」なんて言われて受け入れられるわけがない。

 でも僕は、Googleの偉い人が近道を教えてくれてる感じがして、興味深く観入っていた。自分は売れなくても何かしらを頻繁に作って皆に観てもらって、それで活動が続けられれば幸せだと思っていたから、手段がYouTubeでも全然良いと思った。

『明るく生きているつもり』書影『明るく生きているつもり』(はいじぃ、KADOKAWA)

 そんな価値観だったことが分かれ道だったと思う。

「まあ、それでもいいや」って思えるいい加減な価値観を持ってくれていた自分に感謝だ。ただ、観せられた動画の数々はダウンタウンさんやとんねるずさんのイズムというか、そこに影響された影みたいなものが全く感じられず、面白いと思うことは出来なかったので、帰ったらYouTuberの動画を色々観て、まずは魅力を細部まで分析していこうと思いながらプレゼンを聞いていた。そこはいい加減じゃない自分でいてくれてよかった。

 30代後半。結構な芸歴。ちゃんと会に出席したかどうかを確認するための出欠チェックも兼ねたアンケートを出口で書かされるほどの信用のなさ。

 人生を引き返したほうが安全だなんて微塵も思ってないほど鈍感で、やる気だけは勝手に湧き続けていた幸せな時期。