「周りと比較されてプレッシャー」→松本幸四郎の回答が目からウロコだった!Photo by Shogo Murakami 衣装協力=イザイア/ISAIA Napoli 東京ミッドタウン メイク協力=ラ・メール スタイリスト=川田真梨子 ヘアメイク=林摩規子

幸四郎 ただ剣の腕が立つ、というだけではない。何かよっぽどのことがなければ、「鬼」とまで呼ばれることはないはずです。その凄み、決断力、そして一度決めたら絶対に引き下がらない強さ。それを、長官になったばかりの平蔵としてどう表現するか。

 私が創る平蔵は、自ら矢面に立ち、チームを引っ張っていく「動」のイメージです。「こうと決めた。責任は全て俺が取る。ついてこい」と。そういう前に進むマグマのようなエネルギーを表現するには、「長谷川平蔵。」と言い切る方が、より相応しいのではないか。そう判断しました。

――まさに、武道や芸事の世界で言われる「守破離」の実践ですね。まずは先人の型を徹底的に学び(守)、その本質を理解した上で自分なりの工夫を加え(破)、やがては独自の境地を切り拓いていく(離)。26年には「鬼平犯科帳」シリーズ最新作となる「兇剣」の放送・配信が予定されています。

幸四郎 「鬼平犯科帳」という作品が小説から始まり、テレビドラマになり、映画になり、舞台になり、歌舞伎にもなり、ラジオドラマにもなったり、朗読劇になったりもするのですが、一つの作品でこれだけさまざまな表現ができるのは、この作品ならではと思います。

 映像も舞台も、一本一本が勝負だと思っていますが、どの作品でも自分の力を全て出し切っていきたいと思っています。

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 周囲と比較され、プレッシャーを感じた時、多くの人は萎縮するか、反発するかの二択に陥りがちだ。しかし、松本幸四郎は第三の道を示しているように感じた。

 偉大な先達の仕事を徹底的に研究し、その本質を理解し、心からの尊敬を持つ。そして、その感動を自らのエネルギーに変え、自分なりの表現を創造していく。プレッシャーとは、乗り越えるべき壁ではなく、自らを高めるための最高の燃料なのであろう。

>>【第2回】は12月17日(水)に配信予定です