箱根駅伝における権太坂は、新道である国道1号線の坂のことを称している。

 権太坂は、最初に仕掛けるポイントとして有名だが、坂そのものは急勾配ではなく、ダラダラとした上り坂が続いている。2区を駆ける強者たちにとっては、難所というほどではない。

「サミットストア」の手前に「権太坂上」の信号機があり、ここで権太坂は終わる。15キロ地点の「市児童公園入口」が最後の給水になる。ここで力水を入れ、後半の勝負に気持ちを切り替えていく。

 その先にある「パルシステム神奈川」から一気に下りに入る。最近は、権太坂より、この下りで切り替えて勝負する選手が多い。上りで差がつかない場合、下りで一気に突き放していくという戦略だ。

 相澤晃(東洋大学-旭化成)は、この下りを意識していたという。

「僕は、権太坂を上り終えてからの下りが大事だと思っていました。上ったあと、少し休みたいのですが、そこで休んでしまうとタイムを稼げないので、あそこで休まずに下れるかどうかというのがすごく大事です。下る前に給水をもらって、そこから再スタートというか、残りに向けてエンジンがかかるみたいな感じです」

 第96回大会、相澤が並走してきた伊藤に最初に仕掛けたのが、この下りだった。

 平戸坂下から平坦な道を行き、19キロメートル過ぎの不動坂から戸塚道路に入っていく。そこから横浜新道に合流してからの3キロメートルが、選手が「勝負のラスト3キロ」とこぞって口にする、2区最大の難所になる。ここからは約1キロメートルごとにアップ&ダウンを繰り返していくが、意外と下りがきつい。

1~2割の余力を残しておかないと
超えられない「地獄の1丁目」

 自身も2区を走った法政大学陸上部駅伝監督の坪田智夫は、ラストの勝負には余力が重要だという。

「ラスト3キロまでは、自分のエネルギーと相談しながら走らないといけないのですが、かなりのハイペースで行くのでほとんどの力を使っている。そのラストのために1割、2割の余力をどう残すのか。それができないと結果を残せないです。余力の幅はすごく大きいですし、大事ですね」