最後は下ってから上ることになるが、「戸塚の壁」といわれる「すき家1国戸塚店」から戸塚中継所までの400メートルは、まさに壁のような急激な坂だ。這って歩きたいと思うくらいで、ここはスパートが効かず、心拍数が激上がりし酸素さえも薄く感じられる「デスゾーン」だ。
坪田監督は、ここが「地獄の1丁目」という。
「戸塚の壁が最大の難所ですね。22キロを走ってきて、その壁を走ると本当にきついなと思います。その前に権太坂があるじゃないですか。そこを上がって下るんですが、そこもやっかいです。
私は下りがへたというのもあるんですけど、ちょっとブレーキをかけてしまうんですよ。それで足にきてしまう。そこから横浜新道に入って1キロ上がって、下るんですけど、そこがまた足にくるんです。そのまま戸塚の壁を上るので、きつくないわけがない。もうめちゃくちゃきついです」
戸塚警察信号を超えても戸塚中継所まで230メートルほどあり、息が抜けない。襷を握りしめ、もがきながら視界に入ってきた、黄色の外観で有名な釣り具店「タックルベリー戸塚中継店」をめがけて飛び込んでいく。
区間賞を獲った選手は
我々の記憶に刻まれる
このとき、選手は、どんな思いを募らせるのだろうか。
やっとここまで来たという安堵感か、それとも思うように走れなかった悔しさか、やったぞという晴々した思いだろうか……。
『箱根2区』(佐藤 俊、徳間書店)
極限の状態にまで追い込んでいるので、リレーゾーンに入り、3区の選手に襷渡しをすると多くの選手が冷たい路面に倒れ伏す。選手たちは、「目の前が真っ白になる」というが、文字どおり、23.1キロメートルを走り抜けて燃え尽きる感じなのだろう。
往路区間で、精魂尽き果てて倒れるシーンが続出するのは、ほとんど2区と5区だけだ。付き添いらに抱きかかえられていく彼らの表情には、漫画「あしたのジョー」のラストを思わせる清々しさが宿っている。
2区勝者には、「山の神」のような称号は与えられない。
ただ、エース対決で区間賞を獲った選手は、その栄誉とともに多くの人々の記憶に残ることになる。







