言い換えると、学力格差の原因(少なくとも部分的な原因)は、どこまでが学校での学習と関係があり、どこまでが夏休みの間に起こることと関係があるのか、ということだ。

図表:授業で学んだ読解力の推移同書より転載 拡大画像表示

 それでは、学校での学習で伸びた点数から見ていこう。上の表は、学年の初めの9月から学年の終わりの6月までの間に、テストの点数がどれくらい伸びたかを示している。「合計」の欄は、5年間の学校での学習で伸びた点数の合計だ。

 最初の表とはだいぶ違う結果になった。最初の表は、貧困家庭の子どもは勉強ができないという印象を与えていた。しかしこの表を見るかぎり、明らかにそれは間違っている。

「合計」の欄を見てみよう。小学校の5年間で、貧しい子どもの学習効果は金持ちの子どもを上回っている。前者は189点で、後者は184点だ。中間層の子どもの点数には負けているが、それほど大きな差があるわけではない。実際、2年生の欄を見ると、貧困層の点数の伸びがいちばん大きくなっている。

貧富の差が夏休み後に強く影響
休み中の過ごし方で違いが露わに

 次に、夏休みの後で読解力の点数がどう変化したかを下の表で見ていこう。

図表:夏休み中に学んだ読解力の推移同書より転載 拡大画像表示

 違いがわかるだろうか?

「1年生の夏休み後」の数字を見てみよう。裕福な家庭の子どもは、読解力の成績が15点以上も上昇している。一方で貧しい家庭の子どもは、夏休み後の成績が4点近く低くなった。貧しい子どもも、授業がある時期なら、金持ちの子どもよりも点数を伸ばすことができるかもしれない。しかし夏休みを挟むと、かなり後れを取ってしまうのだ。

 さて、次に「合計」の数字を見てみよう。これは、1年生から5年生の初めまでの、点数の変化の合計だ。貧しい家庭の子どもは、読解力の点数が合計で0.26点上昇している。つまり読解に関しては、貧しい家庭の子どもは、学校の授業がない時期になると何も学ばないということだ。裕福な家庭の子どもはそれとは対照的で、なんと52.49点も上昇している。