それからは、1時間07分34秒よりも1時間07分を切るところを目標にしてやってきた。このとき、自分の力を全部出しきって目標を達成した。この走りが箱根駅伝を4回走ったなかで、いちばん良かった。会心の走りができました」
渡辺VSマヤカの戦いは
永久に不滅の名勝負
渡辺のすごさは、一度も競り合うことなく、見えない敵との戦いで、しかも単独走で区間新記録を達成したことだ。
単独走で記録を出すのは、非常に難しい。集団走では前に引っ張ってもらうことで体力の消耗を最小限に止め、タイムなどあれこれ気にせず、精神的にラクに走れる。
だが、単独走では自分の力を正確に把握し、自分でペース配分を考え、つねに自分と向き合い、勝負所を見極めて走らなければならない。ひとりでいくタフさとメンタルの強さが必要とされるのだ。渡辺は、すべての能力が高い次元で備わっていた稀有なランナーといえるだろう。
マヤカは、1分半前につくった記録を破られたことについて、呆然とした。
『箱根2区』(佐藤 俊、徳間書店)
「勝ったと思ったら、すぐに記録を破られて、やられちゃいました。もちろん悔しい思いがあったんですが、僕はチームが勝つことが大事だと思っていたので、トップで襷を渡せたことにホッとしていました。絶対に早稲田大学には負けたくないと思っていたので、最終的に優勝できて嬉しかった。渡辺に負けた悔しさはぶっ飛びました」
山梨学院大学は、早稲田大学に2分02秒差をつけて、総合優勝を果たした。マヤカは渡辺に負けたが、勝負には勝ったのだ。
今後、箱根駅伝がどう変化をしていくのかは、わからない。
しかし、あの時代、箱根駅伝を国民レベルの関心事に押し上げるキッカケとなった「渡辺VSマヤカ」の戦いは、これからも色褪せることはない。
2人の戦いもまた、永久に不滅なのだ。







