顧客の「ネガティブアフェクト」を
とことん潰すアマゾンの徹底ぶり

 それを特に強く感じるのが、アメリカのアマゾンの返品システムです。

 ネットショッピングの場合、必ず思うのが「実際に届いて、気に入らなかったらどうしよう」ということですよね。特に洋服や靴は不安になります。

 もちろん気に入らなければ返品すればいいのです。アマゾンに限らず、ネットショッピングは基本的に返品可能で、理由によっては送料が無料ということも多いものです。

 でも実際に返品するには手間がかかります。箱に入れてガムテープで留めて、ラベルをプリントして、時間内に郵便局やコンビニに持参しなくてはいけません(一例です)。適当なサイズの箱がない、自宅にプリンターがない、忙しくて郵便局に行けない……そうなると「もういいや、返品はめんどう」とあきらめてしまうかもしれません。

 そして思うのです。「ネットはダメだ。次からは実店舗で買おう」と。

『ポジティブアフェクトで幸せの仕組み化』書影『ポジティブアフェクトで幸せの仕組み化』(相良奈美香、主婦の友社)

 それを改善しているのが、アメリカのアマゾンです。返品したい商品があれば、ホールフーズ・マーケット(オーガニックスーパーのチェーン店。全米で500店舗以上ある)に持っていけばいいのです。ネットで簡単な手続きをしたら、買い物のついでに返品したい商品を受付に持参するだけ。箱もガムテープもいりません。郵便局より長い時間営業しています。返品を恐れずに注文できるのです。

 また、UPS(米国に本社を置く世界最大級の宅配サービス会社)は全米で5000店舗以上あるので、そこに持ち込んでも返品できるそうです。

 合理的に考えれば、「返品をしやすくする」というのはビジネスにとって大きな痛手になります。それでも、とことん返品システムを簡単にするという姿勢に、私は「ネガティブアフェクトが生まれそうな要因を徹底的につぶす」というアマゾンの覚悟と戦略を感じるのです。