毎朝嫌がっていた子が笑顔で登園?行動経済学者が教える「やる気を引き出す魔法のひと言」写真はイメージです Photo:PIXTA

経済の理屈を扱うものと思われがちな経済学だが、実は「人をどう動かすか」を分析する学問でもある。中でも重要なのが、人の行動を左右するインセンティブという考え方。子育てや政治の意思決定まで、あらゆる場面においてうまくいかないと悩んでいる諸氏には、経済学の視点が必要かもしれない。※本稿は、大竹文雄『経済学者のアタマの中』(筑摩書房)の一部を抜粋・編集したものです。

「人が動く仕組み」を
解き明かす学問として再注目

 経済学者にならなくても、経済学を学ぶと将来の仕事や生活の「役に立つ」ことが多々あると私は思っています。

 経済学を学ぶ最大の利点は、合理的な意思決定の方法を身につけられるということです。将来の目標から逆算して、今は何をすべきかを考える習慣も得られるでしょう。

 人はインセンティブに応じて行動するのだと知ることで、世の中を少し幅広い観点から見ることができるようにもなります。

 組織の中での人の行動の理由や、皆がよく働いてくれる方法を考えたり、ある商品が売れる(=お客さんがそれを買う)理由を考えたりする時も、人はインセンティブに基づいて行動するという観点から解釈すると、答えを見つけやすくなるでしょう。

 その時、人の行動は合理的な意思決定から外れがちだということも意識しておくことで、その人にとってのインセンティブが何かを理解し、それに応じたインセンティブ設計ができるようになると考えられます。

 もちろん、人間があらゆることに非合理な意思決定をするでたらめな主体であれば、インセンティブの設計など不可能です。