マクドナルドのシステムごと牛丼に「移植」した!
2014年の東洋経済オンラインの記事『これがゼンショー流の成り上がり術だ』によると、小川氏は次のように語っている。
《僕の基本認識は、さっき言ったように、牛丼というのは米国のハンバーガー、だけど、吉野家というイメージが男の食い物で、駅前でカッカカッカって食べると、こうしみ付いているけど、牛丼という商品は……。》
《米国のハンバーガーというのは何かって言ったら、郊外でもショッピングセンターでもダウンタウンも、いろんなところにあって、家族もカップルも年寄りも子供も、そして男もサラリーマンも食べている。僕は米国におけるハンバーガーポジションだと言った意味は深くて、日本でもっと普遍性のあるベーシック商品だろうという認識をした》
《吉野家よりももっと広い客層、広いTPOが取れるはずだという考えだったから、それはやろうということで、初めからテーブル席で始めたんですよ》
この「牛丼=ハンバーガー」という発見こそが、勝敗を分けた分水嶺だった。
小川氏が見ていたのは、単に「パンに肉を挟むか、ご飯に肉を乗せるか」という食品形状の違いではない。マクドナルドが世界を制覇した「システムそのもの」を、牛丼に移植しようとしたのだ。
ハンバーガーショップには、家族連れもいれば、カップルもいる。お年寄りも子どももいる。ならば牛丼屋もそうあるべきだ。そう考えたすき家は、最初からテーブル席を用意し、メニューを多様化させ、郊外のロードサイドに店を出した。
これによって、これまで吉野家が取りこぼしていた「女性」や「家族」という巨大な客層をごっそりと取り込むことに成功したのである。
そして、この「マクドナルドを模倣する」という戦略が、低価格と高品質を維持しながら成長を続ける上で「唯一の正解」であったことが、近年の学術研究によっても裏付けられている。







