電車の中で友人の訃報に号泣
そのとき手渡されたものは

 電車の中では、突如として個人的な悲しみに直面することもあります。そんな時、見知らぬ人が差し伸べてくれた手は、人への信頼を取り戻させてくれます。愛知県在住の女性(50代)はこう振り返ります。

「休日に買い物に行こうと、ひとりで名鉄に乗っていたときのこと。LINEの通知が入り、見るととてもショックな内容でした。闘病中だった、仲の良い友達が亡くなったという知らせだったのです」

「あまりに突然でした。入院中にお見舞いに行ったときの彼女の顔が思い浮かびました。すると涙があふれて止まらず、私は電車の中で大泣きしてしまいました。私のような中年女性がいきなり泣きだして、周りの人もビックリしたと思います」

「すると、ひとりのアジア人女性がティッシュを持って来てくれたのです。少しなまった日本語で『顔を拭きなさい』と言ってくれました。今思い返しても、その優しさと行動に感動します」

 悲しみに暮れる人に対し、躊躇なく手を差し伸べる行動は、言葉や文化の違いを超えた普遍的な「人間愛」を感じます。昨今は、外国人の乗車マナーが悪いと一部の話が大きく取り上げられがちですが、すべての人がそうではありません。この飾り気のない思いやりあふれる行動は、多くの人が忘れがちな、他者への温かい眼差しの大切さを教えてくれます。