電車を飛び回る虫にパニック
そのとき立ち上がったのは…
電車内が一気に緊迫する瞬間。それは、電車内に不快な「異物」が出現することです。その代表格は「虫」。千葉県在住の女性(30代)は、車内に虫が入り込んできた珍事をふりかえります。
「夏のある日、総武線に乗っていました。するとドアが空いたときに、大きめの虫が飛び込んできました。ハチではないのですが、ハエよりも大きい、なんとも嫌な感じの虫です。いろんな場所を飛び回り、乗客にシッシッとやられたり、おじさんにはチッと舌打ちをされたりしていました。乗客みんなが虫の動向に注目します」
「私は虫が大嫌いなのですが、『こっちに来ないで』と思った瞬間にこっちに飛んでくるんですよね。不幸にもそれは私のほうに飛んできました。私は少しパニックになり、足をバタバタさせたり、顔周りに飛んできたので、頭を避けるように左右に揺らしました」
「私を通り過ぎて、今度は窓際に止まった虫。その瞬間、ひとりの少年がやってきて、『エイッ』とティッシュで捕獲しました。なんと勇気のある少年でしょう。乗客はほっと安堵し、自然に拍手が起こりました。僕がヒーローだとばかりに、お母さんのところに戻り、満足げな顔をしていたのがかわいかったです」
車内に出現する虫は厄介なものです。しかし、この少年のとっさの行動はお見事、まさにヒーローです。小さな出来事ながらも、公共の場での一体感を生み出したエピソードだと言えるでしょう。
乗客一人ひとりの
「人間性」を大切に
ときにイラっとする出来事に遭遇する電車移動でも、「いい話だな」と思うような感動エピソードはそこらじゅうにあります。3つの話の共通点は、電車という公共交通機関が単に目的地へ向かうための移動空間であっても、乗客一人ひとりの「人間性」を大切にしている点です。
電車に乗るとき、急いでいたり疲れていたりすると、周りの人に気が回らないこともあります。しかし、それぞれがひとりの人間です。
一日の終わりに乗客をいたわるプロフェッショナルとしての車掌さんの温かい優しさ、言葉や文化の違いを超えて悲しみに寄り添う思いやり、小さなパニックを一瞬で和ませる少年の機転。どれも私たちが日常の中で見過ごしがちな人間のやさしさです。
公共の空間の雰囲気や安全性は、厳格なルールだけでなく、私たち一人ひとりの小さな行動によって形作られています。快適な空間を作るためにマナーを守りたいですし、困っている人を見かけたら助けにいきたいものです。
特に東京では「他人には介入しないこと」が良いこととされがちですが、必要であれば人間的なコミュニケーションは積極的にとっていく。これが、日々の移動を安心感と温もりに満ちた時間へと変えていく鍵となるでしょう。
※鉄道トレンド総研に寄せられたエピソードをもとに再構成しています。







