海外M&Aが増え、海外投資家比率が急上昇している昨今。「英語の決算書を読むスキル」の必要性がこれまでと比べてはるかに上がっています。しかし、ただでさえ難しそうな会計用語を英語で読むなんてとんでもない、と思う人も少なくありません。
そんな人に最適なのが新刊『【新版】英語の決算書を読むスキル』です。
実は、英語の決算書は「中学英語レベルの英単語」による勘定科目と、グロス、ネットといった「カタカナ英語」の2つを整理すれば十分理解できるのです。そんな「会計英語の勘どころ」や「会計で頻出の英単語」はもちろん、会計指標分析、成長率計算、百分率決算書といった「これでひととおり決算書を分析した」と胸を張って言えるツールまで全網羅。少しでも英語の決算書に触れる機会のあるビジネスパーソンは全員必携の書になりました。
今回はその中から、会計は英語で学んだほうが簡単である理由を紹介します。

「売上原価」の意味が一瞬でわかる超簡単な考え方Photo: Adobe Stock

会計は「英語」のほうがラクに覚えられる

 私は、これまでビジネススクールや企業内研修で、数多くの学生・社会人に会計を講義してきました。そこで感じたのは、会計とかアカウンティングと聞くと、苦手意識を感じてしまう人がどうも多いことです。本書を手にされたあなたは、いかがでしょうか。

 講義をしていて、時折ふと思うことがあります。

「あぁ、会計を難しくしているのは、日本語なんだな」
「英語で会計を学んでいれば、こんなことはすぐわかる話なのに……」

 こう言うと意外に思われる方も多いでしょうから、まずは設問で例を示してみましょう。

設問
あなたは文房具店を営んでいます。今月は80円のペンを4本仕入れて、合計320円を支払いました。そのうち、今月は3本のみ販売しました。1本100円で販売し、合計300円を現金で受け取りました。下の空欄を埋める形で今月の損益計算書(PL)を作成してください(図表1)。
「売上原価」の意味が一瞬でわかる超簡単な考え方図表1 損益計算書を作成してみよう
回答例
「3本のペンを売って300円入ってきたんだから、売上は300円だよね。それでもペンは4本買って320円払ったんだから、その分は売上原価として引いて-320円。この文房具店は、今月は20円の赤字だな(図表2)」
「売上原価」の意味が一瞬でわかる超簡単な考え方図表2 回答例

 実はこの設問は、私が受講生によく問いかけるものです。ビジネス経験のない学生だけではなく、ビジネスの最前線で活躍してきたビジネスパーソンも含めて、半分程度の方は答えを間違えてしまいます。

 もし、あなたの答えが上に示したものだと、残念ながら間違えた半分の1人としてカウントされます。上記の思考も解答も、会計の世界では誤りです。

 では、本当の正解はどうなるのでしょうか。同じ設問を、今度は英語でやってみましょう。

Quiz
This month, you purchased four pens at 80 yen each. You paid 320 yen in total. You sold only three pens this month. Each pen is priced at 100 yen; therefore, you received 300 yen. Please complete your monthly Income Statement(P&L) below.(図表3
「売上原価」の意味が一瞬でわかる超簡単な考え方図表3 英語で損益計算書を作ろう
回答例
「3本のペンを売って300円入ってきたんだから、Sales(売上高)は300円だよね。それからCost of goods soldは、「売れた分(Sold)のグッズ(Goods)のコスト(Cost)」っていうことだから、売れた3本分のペンのコスト、つまり240円ということか。今月は60円の黒字だな(図表4)」
「売上原価」の意味が一瞬でわかる超簡単な考え方図表4 回答例

「売上原価」という言葉は、なんと難しい表現かといつも思います。会計アレルギーのある方に対して、日本語の会計用語には、ダメ押しのようにわかりにくい言葉がたくさん登場してきます。まるで「わかる人だけついてくればいい」とでも言うように。
 英語で売上原価は「Cost of goods sold」と言います(図表5)。

「売上原価」の意味が一瞬でわかる超簡単な考え方図表5 「売上原価」は英語で言われたほうがわかりやすい

 売上原価と言われてピンと来ない人でも、「Cost of goods sold」と言われてわからない人はいないはずです。そのまま読んで「売れたグッズのコスト」。つまり、売れた3本分のペンのコストとして、240円となるのです。「Cost of goods purchased」(買ったグッズのコスト)ではないのですね。

 売上原価という言葉も、よくよく見ると、「売り上げた分の原資となっている価値」、つまり「Cost of goods sold」という表現になっていることに気づきます。でも、漢字をじっくりと見ればようやくわかる話であって、口頭で言われてすぐに理解できるものではないですね。