衝撃的な事実をあぶり出したのは
北海道根室振興局の発掘事業
この衝撃的な事実が発表されたのは、2017年12月である。米露の文献を照らし合わせ、全体像をあぶり出したのは北海道根室振興局だ。同振興局は戦後70年を迎える2015年から3年計画で「北方領土遺産発掘・継承事業~戦後七十年“忘れてはいけない物語”」として掘り起こしていた。
10代の原節子が出演した内田吐夢監督の映画「生命の冠(1936年)」、米国のリンドバーグ夫妻が31年の北太平洋横断飛行で不時着した択捉・国後の両島での日本人との交流、ソ連占領下の混住時代のロシア語版写真集『千の島を巡る 一九四六年のクリル探検』掲載の人物特定など、さまざまな「遺産」を探し当てていった。
発掘事業はもっぱら振興局の職員が担い、注目に値する遺産は随時、企画展や講演、シンポジウムなどで発表された。私は、この事業を進めた「北方領土遺産調査検討会議」(委員長、故・脇紀美夫・千島歯舞諸島居住者連盟理事長、10人)の委員の一人であった。
委員とはいっても、検討会議は年2回程度で、振興局が進める事業に意見や助言を行う立場であったが、「プロジェクト・フラ」の再発見は白眉の事業の一つだと思う。
振興局は2018年1月、根室市の北海道立北方四島交流センター(ニ・ホ・ロ)で企画展「北方四島~運命の9日間」を開催すべく準備を進めており、概要についての資料を事前に報道各社にメール送信していた。
展示の根拠となる資料は、主に3つあった。1つは、米国軍事史に詳しい元陸軍中尉、リチャード・A・ラッセル氏の「プロジェクト・フラ ソ連対日参戦に備えた米ソの極秘作戦」“Project Hula: Secret Soviet-American Cooperation in the War Against Japan”(Washington,D.C.: Naval Histori-cal Center)で、これは1997年に米国で出版されていた(英文)。
ロシア側の論文も根拠の一つとなった。サハリン州の歴史研究者で、サハリン州戦勝記念館科学部長のイーゴリ・A・サマリンが2001年、「サハリン州郷土博物館紀要No.3」に寄稿した論文「1945年8月のサハリンとクリル諸島上陸作戦に参加した軍艦と補助船舶の注釈付きリスト」(ロシア語)だ。
3つめが、先に引用した極東ロシアの国際関係を専門とするスラヴィンスキー『千島占領 一九四五年 夏』である。







