三つ目は、介護休業や介護両立支援制度等を利用しやすい雇用環境の整備です。
事業主は以下の四つの措置から、いずれか一つを選んで実施する必要があります。(1)介護休業・介護両立支援制度等に関する研修の実施(特に管理職は研修を受けたことがある状態にすること)、(2)相談体制の整備(相談窓口の設置と周知)、(3)自社の労働者への制度利用事例の収集・提供、(4)制度の取得促進に関する方針の周知(トップメッセージの発信等)。少なくともいずれかを選択して実施することが義務ですが、複数の措置を組み合わせて実施していただくことが望ましいと考えています。
転職者も制度を利用しやすように
勤続6カ月未満でも介護休暇が取得可能
――介護に直面した労働者が申し出た場合の企業からの個別周知・意向確認、40歳など早期段階での企業からの情報提供、相談窓口などの環境整備の三つが義務化されたということですね。
はい。また、今回の改正では、介護休暇についても変更がありました。これまで、労使協定を結べば勤続6カ月未満の労働者を介護休暇の対象から除外できる仕組みがありましたが、この仕組みが廃止されました。
背景には、労働市場の変化があります。転職などの労働移動が活発化する中で、「親の介護をしながらでも続けられる仕事に転職したい」と考える人が転職しようとした際、仮に転職予定企業の規定が「勤務6カ月後からしか介護休暇は使えない」であると、その6カ月間は通院の付き添いが発生しても介護休暇を使えないということが起こり得ます。
こうした労働移動の阻害要因を排し、円滑な労働移動に資するため、介護休暇の6カ月制限を撤廃したのです。
さらに、努力義務ではありますが、介護期の働き方について労働者がテレワークを選択できるようにすることも定めています。
ただし、テレワークの実施に当たってはその具体的方法に注意が必要と考えています。例えば、認知症の親が家の中を歩き回っている環境でテレワークをしても、仕事に集中できません。そのようなことをなくし、仕事に集中できる環境を整えることがテレワークを効果的に実施するために重要となります。
また、テレワークは職種によって適不適があります。工場のライン業務や小売店など対面での業務が必須の職種もあるため、各社の事情に応じて実施していただく努力義務としています。








