いや、そのすぐ隣に“上田”いるよ、と思いながら兄を見ると、マスターズの時のタイガー・ウッズの如き振る舞いで手を振って応えていた。

(そもそも「上田アニ」の本物って何? “アニ”って時点で本物じゃないんじゃないかな? いや、別に俺が本物ってわけでもないんだけどさ。それに「上田アニ」の偽物って存在しないだろ? たとえば矢沢B吉を見て「矢沢B吉の本物だ!」とは言わないだろう? じゃあ仮に、矢沢B吉に似ている人がいたとしても、その人を矢沢B吉の偽物とは思わないだろう? 矢沢永吉の偽物と思うだろう? ん? そういうこととは違うのかな?)

一緒にいた高校時代の同級生や後輩に冷笑されたワケ

 そんなことを考えながら、パターの練習などさほど身が入らず、1番ホールへ向かった。プレー前にキャディさんがメンバーそれぞれのクラブの本数を確認した。

「○○××さん、おはようございます、14本でよろしいですね、よろしくお願いします。はい、△△□□さん、おはようございます、14本ですね、よろしくお願いします。えー、上田晋也さん、アラ?」

「あっ、どうも、よろしくお願いします」

 私は、ありったけの笑顔で挨拶をした。

「アラ、くりぃむしちゅーの上田さんと同じ名前じゃないですか? はい14本でよろしいですね、よろしくお願いします」

「……そ、そうなんですよ、同姓同名なんですよ。よろしくお願いします」

 一緒にいた高校時代の同級生や後輩に冷笑され、いい恥をかいた。ありったけの笑顔じゃなく、ありきたりの笑顔にしとけばよかった。

 3番ホールのティーグランドに来た時、キャディさんがマジマジと私の顔を見る。

 ようやく本人だと気付いてくれたかな、と多少の安堵感に包まれようとした時、キャディさんはこう言った。

「お客さんは、くりぃむしちゅーの上田さんと名前も一緒だけど、鼻から下辺りも似てらっしゃるわー」