すでに後半担当のキャディさんが待っていて、挨拶を交わした。

「後半担当の○○と申します、よろしくお願いいたします。まずはクラブ確認をさせてください」

「はい、お願いします」

「…………」

「…………」

 お互いにしばしの沈黙。なぜ本数を確認しないのだろう、と私が訝しげにキャディさんの顔を覗き込むと、キャディさんは呆れ顔で私にこう言った。

「いや、お客さん、名前を言っていただかないと、どのクラブがお客さんのクラブかわかりませんので」

“兄貴みたいに俺も売れたい”

 私は調子に乗っていたと思う。顔を見せれば「上田」だと認識してもらえ、キャディさんが「上田」のネームプレートが付いたバッグを探し、クラブ確認をしてくれるもの、と思い込んでいた。前半あれだけの目に遭ったのに。天狗になっていたと言っても過言ではない。日本史史上これだけの慢心は、桶狭間(おけはざま)までくつろぐ今川義元以来だろう。

「あぁ、すいません。上田晋也と申します。よろしくお願いします」

 お詫びをしてクラブ確認をしてもらった。当然のことながら、そのキャディさんにも「くりぃむしちゅーの上田」と認識されることはなかった。

 ホールアウトしてクラブハウスに向かうと、キャディさんたち数人と兄が一緒に写真を撮っていた。その輪の中には、午前中の例のキャディさんもいた。私に写真をお願いしてくるキャディさんなどゼロ。

「上田アニ」だったら、後半のキャディさんにも気付いてもらえたんだろうなー。

 私の目標はいつの日からか、“兄貴みたいに俺も売れたい”になっている。