スマホ、ネット、SNS……気が散るものだらけの世界で「本当にやりたいこと」を実現するには? タスクからタスクへと次々と飛び回っては結局何もできない毎日をやめて、「一度に1つの作業」を徹底する「一点集中」の世界へ。18言語で話題の世界的ロングセラー『一点集中術――限られた時間で次々とやりたいことを実現できる』より、特別に一部を紹介する。
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愛すべきマルチタスカーの友だちに教えてあげよう
あなたの周囲には、頑固なマルチタスカーがいるかもしれない。そんな人に、どうすればシングルタスクのよさを説明できるだろう?
私の周囲にも、はなはだしい思い違いをしている愛すべきマルチタスカーの友人がいる。そんな人たちと実際にかわした会話の例を次に挙げるので、参考にしてもらいたい。
最初に、そうした友人がいかにもいらだたしそうに、口早に言った不合理な主張が並んでいる。その次に、それに対して、私がシングルタスクの効果を伝えようと返した言葉を挙げる。
これを見ながら、あなたならどんな気のきいた返事をするかを自分なりに考えてみてほしい。
いますぐシングルタスクに切り替えるべき理由
×マルチタスカーの不合理な主張
「いま11時15分。なのに、昼までに終わらせなくちゃいけない仕事が2つもあるんだ。一度に1つのことだけに専念なんかしていられるか」
◯シングルタスカーの合理的な反論
人間は、一度に1つのことしかできないようにできている。タスクの切り替えばかりしていると、集中力を保つのは無理。それどころか、約束の時刻までに満足のいく成果をますますあげられなくなる。
×マルチタスカーの不合理な主張
「目の前の相手の要望に応じたいからと、ほかの人を待たせるのは不作法だし自分本位だ」
◯シングルタスカーの合理的な反論
目の前の相手への対応よりマルチタスクを優先するほうがよほど無礼だし、相手の時間を軽んじていることになる。
×マルチタスカーの不合理な主張
「自分とは直接関係のないことが話題になっている退屈な会議中に、返信が必要なメールに対応すれば、仕事の能率が上がる」
◯シングルタスカーの合理的な反論
さまざまな研究結果を見ればわかるように、とりわけエグゼクティブの人たちは、そうした行為を意志と自制心の欠如のあらわれと見なしている。
×マルチタスカーの不合理な主張
「私のところには1日に100通もメールがくるんだ。マルチタスクをしなくてはやっていけない!」
◯シングルタスカーの合理的な反論
能率よく多数の用事をこなすには、一度に1つのことに集中するしか方法はない。
×マルチタスカーの不合理な主張
「会議の最中にメッセージにすばやく返信すれば能率が上がる。あとでやらなくちゃいけないことを、1つ減らせるだろう?」
◯シングルタスカーの合理的な反論
それは、とんでもなくいい加減な行動。メッセージにお決まりの言葉でとりあえず返信するのは相手に失礼だし、会議中に突然質問されたとき、何も答えることができなければ、あなたは信用を失うことになる。
×マルチタスカーの不合理な主張
「マルチタスクをこなせないなんて、でたらめもいいところだ。だって私は音楽を聴きながらエクササイズをするほうが、身をいれることができるもの」
◯シングルタスカーの合理的な反論
片方、もしくは両方の作業が意識的な思考を必要としないのであれば、脳は2つのタスクを同時に処理することができる。でも、これはマルチタスクにはあたらない。
×マルチタスカーの不合理な主張
「マルチタスクをしなくちゃ、やっていけないんだよ。一度に1つの作業だけに集中していたら、これだけたくさんの用事をこなすのは無理だ」
◯シングルタスカーの合理的な反論
私には複数の作業を同時にこなすことはできないし、あなたにもそれはできない。多数の用事をこなすには、一点集中術を実践するしかない。
×マルチタスカーの不合理な主張
「私たちの仕事では、マルチタスクをある程度こなすのが当然だと思われているんです」
◯シングルタスカーの合理的な反論
あなたは誤解している。あなたに期待されているのは、成果をあげられる有能なプロであることだ。
×マルチタスカーの不合理な主張
「チームミーティングのあいだ、ずっと集中しているなんて無理だ。注意を向ける先を分散させるのが、これからのやり方だ」
◯シングルタスカーの合理的な反論
ミーティングに集中しないでいると、チームの団結力が弱まり、チーム一丸となって大きな成果をあげられなくなる。
×マルチタスカーの不合理な主張
「若者は、マルチタスクをうまくこなせる」
◯シングルタスカーの合理的な反論
人間の脳は例外なく、シングルタスクに専念するようにできている。年齢による違いはない。
×マルチタスカーの不合理な主張
「私は実際にマルチタスクをこなしているし、同時にすべての作業に集中できている」
◯シングルタスカーの合理的な反論
マルチタスクをしていると、かならず気が散る。そうすると、いま手がけている作業にも、いま対応している相手にも、部分的な注意を向けることしかできない。
×マルチタスカーの不合理な主張
「私は、作業に没頭したくない。没頭すると、自分のまわりに壁をつくってしまい、周囲で起こっていることに気づかなくなってしまう」
◯シングルタスカーの合理的な反論
似たような不安に「ムキムキになりすぎるのがこわいから、身体を鍛えたくない」というものがある。だがそんな心配は無用だし、そういう人たちはそれを言い訳にしてぐうたらしているだけだ。もしシングルタスクがとてつもなく得意で、時間の流れをすっかり忘れてしまう危険がある人は、あらかじめ制限時間を決め、アラームを設定しておけばいい。
ここで最後に、マルチタスク信奉者のどんな主張にも反論できる言葉を教えよう。
〈シングルタスクは「時間」を有効活用し、「生産性」を上げ、「対人関係」を改善する。〉
さあ、あとは実践あるのみだ!
(本記事は、デボラ・ザック著『一点集中術――限られた時間で次々とやりたいことを実現できる』からの抜粋です)









