「原稿を全部見せてほしい」「この部分について修正してくれ」――実はこの要求、企業取材においては要注意だ。広告記事とノンフィクション記事の取材趣旨は明確に異なる。では、その線引きはどこにあるのだろうか。『ルポ 超高級老人ホーム』などの著作があるノンフィクションライター・甚野博則氏と『潜入取材、全手法』を上梓したジャーナリスト・横田増生氏が、企業とメディアが衝突する修羅場について語り合った。(企画・構成:ダイヤモンド社書籍編集局 工藤佳子)

「勝手に“ダジャレ”を追加」「原稿を見せろと無理やり…」記者が語る企業取材の“修羅場”・ワースト1広告記事出ない場合、原稿確認や修正には交渉が必要だ(Photo: Adobe Stock)

「原稿見せろ」で
修羅場になることも

――横田さんはこれまで、ユニクロやAmazonなど、企業への取材を多く経験されてきました。しかし、ブランドイメージを大切にする大企業では、取材後の広報とのやりとりにも難しさがありそうです。

横田増生(以下、横田)「原稿を全部見せろ」って言ってくる人はいますよね。しかも、自分が取材を受けた部分だけでなく、全部の原稿を最初から最後まで見せろと。

甚野博則(以下、甚野):『ルポ 超高級老人ホーム』でもそういう施設がありました。なぜ検閲されて出版しなきゃいけないのか、って思ってしまいますよね。

“自前のジョーク”を
勝手に書き足す社長

横田:業界紙で働いていた時は毎年1月に各業界の社長を集めて座談会の企画をやるんです。倉庫業界の座談会では財閥系企業など錚々たる倉庫会社の社長が出てくるんだけれども、とある会社の社長が「原稿を見せろ」と言ってきたんです。

 実は、僕が編集長になる前は原稿を見せていたのです。でも、とある会社の社長が座談会の時には言ってもいなかったことを書き足したり、最後は自分のジョークで締めたりするんですよ。他の企業は苦々しく思っていたようです。

 それで僕が編集長になってからは、「録音もしていますので、今回は全部任せていただきます」と言って任せてもらったことがありました。

 でも翌日、その会社の総務部から電話があって、「やっぱり原稿は見せてほしいんですよね」って。「もう一生座談会に来るな!」と思いました(笑)。

甚野:介護業界も似ていました。業界として、今までどういう扱われ方をしてきたのかが、取材前後のやりとりで如実に分かるなと思って。原稿を見せてもらえるのが当たり前になっているんですよね。本来、全然当たり前じゃないんですけど。