記者を超えて
編集に“ねじ込んで”くる企業

――原稿を見せるように要求された時、どうするのが正解なのでしょうか。

甚野:『ルポ 超高級老人ホーム』の時は、そもそも取材依頼をする際に広告記事ではない旨を伝えましたよね。要するにノンフィクションの取材だと。

 広告だったらお金を払ってもらっているから相手の要望通りにするのかもしれませんが、お金ももらっていないのに自分たちの思い通りの記事が載ると思っているのであれば全然違います。

 ただ、相手のコメントとして記事に載っているカギ括弧の部分は場合によっては見せてもいいのかもしれません。言い回しがおかしかった、これだと誤解を受けそうだなとか、それぐらいだったら直すのはいいと思うんですよね。その代わり責任を持ってほしいと思いますが。

 でも言ってないことを加筆されたり、ネガティブな話をやたらポジティブな話に直されたりしたら困りますよね。じゃあ、取材時の話はなんだったんだ、と。

 僕じゃなくて担当編集に連絡がいくパターンもありました。多分、「編集にねじ込めばどうにかなる」って思っているんでしょう。舐められているな、と感じました。この人たちは何でも自分の思い通りに書き換えているんだろうなって思ってしまいます。

横田:ノンフィクションでは広告主の問題もありますよね。たとえば新潮社には当時『考える人』という雑誌がありました。良い紙を使っていて、ハイソな雑誌だったのですが、これはユニクロの一社提供で作っている雑誌だったんです。

 もちろんこれは僕の憶測ですが、もしかすると新潮社でユニクロを批判する記事を載せてもらうのは大変だったかもしれないね。

甚野博則(じんの・ひろのり)
1973年生まれ。大学卒業後、大手電機メーカーや出版社などを経て2006年から『週刊文春』記者に。2017年の「『甘利明大臣事務所に賄賂1200万円を渡した』実名告発」などの記事で「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」のスクープ賞を2度受賞。現在はフリーランスのノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌などで社会ニュースやルポルタージュなどの記事を執筆。近著に『実録ルポ 介護の裏』(文藝春秋)、『ルポ 超高級老人ホーム』(ダイヤモンド社)、『衝撃ルポ 介護大崩壊』(宝島社)がある。
横田増生(よこた・ますお)
1965年福岡県生まれ。関西学院大学を卒業後、予備校講師を経て、アメリカ・アイオワ大学ジャーナリズム学部で修士号を取得。93年に帰国後、物流業界紙『輸送経済』の記者、編集長を務める。99年よりフリーランスとして活躍。主な著書に、『潜入ルポ アマゾン・ドット・コム』、『評伝 ナンシー関「心に一人のナンシーを」』、『仁義なき宅配 ヤマトvs佐川vs日本郵政vsアマゾン』、『ユニクロ潜入一年』『潜入取材、全手法』など。『潜入ルポamazon帝国』(小学館)では、新潮ドキュメント賞、編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞の作品賞を受賞。最新刊『「トランプ信者」潜入一年』(小学館)では、「山本美香記念国際ジャーナリスト賞」を受賞。