以下が、書籍『頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』で紹介している解説と回答です。

意外と機械的な「猫の動き」

 1日目に1の箱を開けて猫がいなかったとしても、猫は2の箱に隠れていて、翌日には1の箱に移動しているかもしれません。

 1日目と2日目の両方とも1の箱を調べて見つからなかったとしても、猫が「3→2→1」と移動して、3日目には1の箱にいる可能性もあります。

 少し考えてみても相当にやっかいな問題です。

 ただ、突破口がないわけではありません。

 具体的に言うと「箱を調べたが猫はいなかった」という情報自体が非常に大きな手がかりになります。
「猫がいる可能性のある箱」を限定できたわけですから。

 そうです。見かけよりも「猫の動き」はかなり限定的です。

複雑な問題に対する3つの戦略

 ここで、複雑な問題に対処するときの3つの戦略をご紹介します。

 ① 仮定
 ② 単純化
 ③ 場合分け

「仮定」は、たとえば最初に1の箱を開けてネコが見つからなかったとして、「では猫が2の箱に隠れていたとしたら?」と考えていくことです。

 ですが今回の場合は箱が5つもあることから、すべての可能性を仮定して考えることはかなり難しいと言えるでしょう。

 そこで役立つのが、2つ目の「単純化」です。

 たとえば「もし箱が3つなら?」など、シンプルなパターンで考えてみることです。

 この場合、どうなるでしょうか?

 最適なのは、1日目に「2」の箱を確認することです。

 そこに「猫がいなかった」場合、それは「猫は1か3のどちらかの箱に隠れている」ということがわかります。

 なので2日目も「2」の箱を確認すれば、1日目に「1」もしくは「3」にいた猫が移動しているため、かならず見つけることができます。

 箱が3つのときは簡単でした。

 では箱が5つの場合はどうすればいいのでしょう。

複数の選択肢は、いくつかに「分ける」

 ここで、3つ目の方法である「場合分け」をしてみます。

 複数の可能性が考えられるときに、その可能性を「いくつかの場合に分けて考える」ことです。

 今回の場合、猫が隠れられる箱は5つありますが、これを「場合分け」できないか考えてみましょう。
 すると……

 箱の選択肢は「偶数の箱」か「奇数の箱」かの、2パターンに分けられます。

 場合分けすることで、考えるべき可能性がシンプルになります。

 これなら「仮定」もしやすくなります。
 では、それぞれのケースで対策を立てていきましょう。

1日目に猫が「偶数」の箱にいる場合

 まずは、1日目に猫が「偶数」の箱にいると仮定して考えてみます。

・1日目:
猫は「2」か「4」にいるので、まずは「2」の箱を調べます。
「2」に猫がいる場合、ここで終了です。
「2」に猫がいない場合、猫は「4」に隠れています。
・2日目:
「3」の箱を調べます。
猫が「4」から「3」に移動した場合、ここで発見できます。
しかし猫が「4」から「5」に移動した場合は、見つかりません。
・3日目:
「4」の箱を調べます。
2日目も猫が見つからなかった場合、猫は「5」にいたということなので、3日目には「4」の箱にいます。

 これで猫を見つけられました!

 つまり猫が1日目に「偶数の箱(2か4)」に隠れている場合、

「2」→「3」→「4」

 の順で箱を調べれば、遅くとも3日目には猫を確実に発見できます。

1日目に猫が「奇数」の箱にいる場合

 さて次は、1日目に猫が「奇数」の箱にいる場合を考えてみます。

 といっても、複雑な考察はいりません。

 なぜなら、先ほどの「偶数の箱」に隠れている場合の戦略で、

1日目「2」→2日目「3」→3日目「4」

 の順で箱を調べて猫が見つからなかった場合(つまり猫が最初に「奇数」の箱にいた場合)、4日目に猫は「偶数の箱」にいるからです。

 もし猫が1日目に偶数の箱に隠れていたなら、先ほどの戦略でかならず3日目までに見つけられます。

 それなのに見つからなかった場合は、猫が1日目に隠れていたのは「奇数の箱(1か3か5)」だったということです。

 その場合、3日目の確認終了時に猫が隠れているのも「奇数の箱(1か3か5)」のいずれかです。

「1日目:奇数の箱」→「2日目:偶数の箱」→「3日目:奇数の箱」と移動しているからです。

 ということは4日目、猫は「偶数の箱(2か4)」に隠れています。

 つまり、先ほどの「猫が偶数の箱にいる場合」と同じ戦略が使えます。

 そこで、ここから再び、

4日目「2」→5日目「3」→6日目「4」

 と調べることで、遅くとも6日目には確実に猫を見つけられます。

「2」→「3」→「4」→「2」→「3」→「4」

 これが、猫を確実に見つけられる戦略です。

 なお、5つの箱は対称的であるため、順序は逆でも問題ありません。

「2」→「3」→「4」→「2」→「3」→「4」
「2」→「3」→「4」→「4」→「3」→「2」
「4」→「3」→「2」→「2」→「3」→「4」
「4」→「3」→「2」→「4」→「3」→「2」

 よって、猫を確実に見つけるための探索手順は以上の4通りです。

<正解>

「2」→「3」→「4」→「2」→「3」→「4」
この順で確認していけば、遅くとも6日目には猫を確実に発見できる

 ということで、AIの回答は正解でした。

この問題からの「学び」は?

 この「シュレディンガーの猫」の問題からは、以下の点が学べます。

 ①「当てに行く」のではなく「追い込む」という発想
 この問題の一番の学びは、猫が「どこにいるか」を当てようとしてはいけないという点です。重要なのは一発で見つけることではなく、見つからなかった結果を使って、次の可能性を確実に狭めていくこと。論理的思考とは、正解を引き当てる勘の良さではなく、情報をどう使うか、という姿勢そのものだとわかります。

 ②「変化する」ものではなく、「変化しないもの」に目を向ける
 この問題では、起こり得る猫の動きを網羅的に考えていくのではなく、そのパターンを「奇数と偶数」という2種類に分類しました。これによって、考えるべき要素が一気に整理されます。このように、変化する対象を追わず、変化しない法則を見抜くのが、論理的思考の重要な型です。

 ③確実性は「戦略」から生まれる
 調べる箱の順番をあらかじめ決めておくことで、運や偶然に頼らず、必ずゴールにたどり着けます。論理的思考とは、運良く「うまくいく」方法ではなく、「必ずうまくいく仕組み」を見つけることである。この問題は、それを非常にわかりやすく教えてくれます。

 このように、「表面的な事実ではなく、本質的な法則を見抜く力」が楽しみながら得られる問題でした。

(本稿の問題は、シリーズ第1弾『頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』から抜粋したものです。本シリーズでは同様の「考えるだけで賢くなれる問題」を多数紹介しています)