倒産と廃業にいたる病(やまい)
EVシフトで部品や金型が消えている

 倒産に至る理由と、廃業に至る理由は異なるはずだ。廃業は主に経営者の高齢化や、事業拡大を目指さなくなった経営者の心情がある。

 ただ、倒産も廃業も、事業を継続しなく/できなくなった意味では共通点がある。まず、建設、介護、物流、外食といった産業では人手不足が甚大だ。従業員がいなくて事業を継続できなくなっている。省人化のために投資する余裕資金もなく、DX化も遅れた事業者が残念な結末を迎えている。

 次に、コスト上昇と販売価格への転嫁だ。原材料や仕入れコストの上昇は、販売価格に転嫁することでしのげる。しかし、商品力がなく顧客から理解を得られないケースは事実上の転嫁ができない。今は企業間取引であれば、公正取引委員会の指導により労務費分の転嫁がなかば強制的に進んでいる。一方、消費者向け商品は、値上げして買ってもらえなければ売り上げは低迷していく。

 重大な産業構造の変化も目の当たりにした。電気自動車(EV)シフトを引き金とした倒産・廃業も見られたのだ。数は多くはない。ただ、EVはガソリン車やハイブリッド車に比べて部品点数が大幅に少ない。エンジン周りの複雑な鋳造部品や精密加工部品が少ないので、関係する部品や金型が市場から消えている。

 発注元の自動車メーカー、大手部品メーカーは生き残りをかけてグローバルに展開している。大手の動向に追随できない場合も廃業を選ぶケースがある。