初任給アップで起きる大問題
既存社員のデメリットは?
筆者は製造業を中心とした経営コンサルタントとして、新入社員の初任給を上げるのは良いことだと思う。一方で、上場するような大手企業の多くが、人件費に関して問題を抱えてきたのを指摘したい。
それはつまり、利益を大幅に上げられない場合、総人件費をそのまま増大させられない。総人件費を引き上げて利益を悪化させてしまうと、株主への説明ができないのだ。
そこで、次のような手法が取られることが、ままある。
◆初任給を大幅に引き上げるといいながら、実際に上がるのは一部の選抜社員のみで、総人件費の総額はほぼ上がらない
◆初任給を引き上げると同時に、多くの既存社員にはジョブ型に移行してもらうことで、年功序列カーブのフラット化を狙う
◆既存の社員の給与を引き下げるのが難しければ、中高年の賃金カーブにおける伸び率を抑えることで、総人件費の総額を横ばいにする
こうなってくると、手放しで褒められない。新入社員の初任給が上がることで、既存社員へのデメリットはないのか。
◆モチベーション低下:既存社員と新入社員の給与が逆転する企業も出てきている。後進の給与が高く、自身は経験に見合った給与をもらっていないと思う人の、やる気は下がる。無力感にもつながる。その結果、休職率や離職率が高まるケースがある。全体の賃金は横ばいでも、特定の世代のベースアップが縮むと、ベテラン社員ほど退職する意向が高まるという調査結果はいくつもある。
◆昇進意欲の低下:メンバーシップ型雇用に慣れた人材は、働くことで昇給しようとしなくなり、自己の能力を見限って仕事への意欲を低下させる。組織全体のパフォーマンス低下にもつながりかねない。
◆教育のボイコット:「俺の時より給料を多くもらっているんだから、自分で成長しろ」などと、先輩や上司が若手の教育を放棄する傾向が出る。要するに、面倒見が悪くなる。結果的に、組織全体が弱くなりかねない。







