フランスの高齢者向け不動産売買契約
「ビアジェ」とは?

 残価ローンの制度が普及していない現在、返済軽減の仕組みは住宅ローンのリスケに相当する。実際、コロナ以降、住宅ローン返済に困っている人が金融機関にリスケを申し出たケースは16万件を超える実績件数で、その97%が実行されている。ほぼ誰でもリスケしてもらえるということだ。

 これはモラルハザードしている現状なので、担保価値を持ったものを残価として設定して、適切なローン返済をする仕組みと考えるとこの制度の意義が明らかになる。

 他国の似た制度として、フランスではビアジェという仕組みがある。これは、高齢者が自宅などの不動産を売却し、購入者から一時金と、売主が生きている限り毎月一定額の年金を受け取りながら、その家に住み続けられるという、高齢者向けの不動産売買契約となる。 

 住む側のメリットは死ぬまで住めることで、デリットは早く亡くなると結果として安く売ったことになることだ。この制度を利用する人は、手に入れたい人がいるような物件の所有者が多く、庶民的な物件にはならないという欠点はある。

 自宅購入時期が以前よりも遅くなり、転職が増えて退職金が減り、物件価格は高騰している。以前は定年退職時に退職金で住宅ローンの残債をまとめて返す人が多かったが、今後は難しいだろう。

 老後に拡大した自宅の資産価値と物価高やローン返済で不足がちな手元資金の2つのバランスが悪い状況は今後も悪化し続ける可能性が高い。

 こうした日本の実情を反映した制度や仕組みは、自分たちで作るしかない。その際は、戸建てもマンションも不動産の残価設定ができ、生命保険と同じ余命計算をし、大数の法則が働いて損得が相殺されるようなものが望ましいだろう。

 それを検討するきっかけとして、今回の残価ローンが位置づけられるのが最も望ましい形かもしれない。その意味でまだ端緒についたばかりであり、今後の制度の普及・発展に期待したい。

(スタイルアクト代表取締役/不動産コンサルタント 沖 有人)