戦後に人権意識は高まったものの
まだまだ発展途上の知的障害者教育
第二次世界大戦が終わると、教育の方針も変わっていきます。戦後の障害児教育として各国で掲げられた特徴は、
・通常の教育の一環とする
・児童の能力によった特別な教育を義務づける(特殊学級の設置)
・一定知能水準以下の児童を学校教育から除外とする(就学免除)
の3点でした。
しかし、戦後の児童数の急増(特に知的障害児の増加)と教員や施設不足もあり、必ずしも実現可能だったわけではありませんし、これらの3点に関しても、軽度知的障害児の増大は貧困層や人種的な問題を「障害」と捉えて特殊学校に措置しているといった批判、重度知的障害の就学免除への保護者団体からの批判、知的障害者施設への非人道的待遇などが問題視されていました。
こういった批判や問題提起は、医療や心理学の進歩、国際的な障害者の権利の提起などにより知的障害への新たな理念につながることとなります。
そして現在に至るまで、障害児教育は障害児の権利保障の中で「ノーマライゼーション」(編集部注/障害のある人もない人も、お互いが特別視されることなく、社会生活を共に送ることが当たり前とする社会福祉の理念)を目指すようになります。
重度障害児の就学免除や安易な特殊教育への選別が見直され、通常学級に障害児を同化させるという「インテグレーション」の考え方は、障害のある個人への「特殊教育」から「特別ニーズ教育(Special Needs Education)」という視点で、障害のある者と障害のない者が共に学ぶ仕組みである「インクルーシブ教育」に移行してきました。
『境界知能 存在の気づかれない人たち』(宮口幸治、扶桑社)
特別ニーズ教育とは、すべての人の学習を支援し、個別のニーズに対応する支援活動です。その観点からは境界知能児は明らかな障害ではないが特別なニーズがあるという点で、まさにその支援対象に含まれるといえます。
しかし一方で、教育ニーズの境界やインクルーシブ教育が曖昧であること、カリキュラムや人員配置などのサポート体制が追い付いていないこと、予算配分の問題等も指摘されており今後の課題も残されているのが現状です。
加えて、今後、時代背景とともにさらに新たなニーズが出てくる可能性もあり、インクルーシブ教育においても何らかの課題を含んでいる可能性も否定できないでしょう。







