IQが「68」と「72」たった4点で人生が分かれる、「境界知能」という理不尽写真はイメージです Photo:PIXTA

知的障害には該当しないものの、平均的なIQに届かない「境界知能」の人たちの存在をご存知だろうか。彼らは、周囲からも障害に気づかれることなく学校生活を終え、成人後も社会的な支援も受けられずに困難を抱えている。彼らの苦しみを児童精神科医が解説する。※本稿は、立命館大学大学院人間科学研究科教授の宮口幸治『境界知能 存在の気づかれない人たち』(扶桑社)の一部を抜粋・編集したものです。

刑事に好かれたい一心で
殺人を「自白」した軽度知的障害者

 知的障害者(編集部注/IQ70未満の人を指す)の冤罪(えんざい)事件で印象深いのが、2003年、滋賀県のある病院で起きた元看護助手の冤罪事件です。

 入院していた男性患者(当時72歳)が死亡し、元看護助手のAさんが「職場での待遇への不満から、呼吸器のチューブをはずした」と自白したというので殺人罪で逮捕され、裁判の結果、懲役12年の実刑判決となりました。

 しかし服役すると一転、Aさんは、獄中で冤罪を訴え続けたのですが聞き入れられず、結局12年の服役が終わった後の2020年の再審判決で、Aさんは無罪となったのです。

 なぜAさんは虚偽の自白をしたかといいますと、警察での取り調べのときの刑事に好意を抱いてしまい、Aさんは自分が罪を認めることで、その刑事から好かれると思ったというのです。

 そんなことがあるのかと思われるかもしれませんが、刑事に好かれるといった目先のことに囚われ、認めたら殺人罪になるかもしれないといった「後先のことを想像するのが苦手」という点は、まさに知的障害の可能性を示す一つの特徴ともいえるのです。